Amazonのアソシエイトとして、コーキの社会人前夜相談室は適格販売により収入を得ています。
※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。
六月になった。
梅雨の曇り空が、事務所の窓を灰色に染めていた。
ケンタから連絡が来たのは、朝の十時だった。
「コーキさん、今日行っていいですか。仕事、全然できなくて」
「来い」
十一時過ぎに現れたケンタは、先月より少しだけ顔が整っていた。生活リズムを整えた成果が、わずかに出ているようだった。ただ、目の奥に何か違うものがあった。疲れとも違う。もっと深いところにある何かだ。
「座れ。コーヒーでいいか」
「……はい」
しばらく黙ってコーヒーを飲んでから、ケンタが口を開いた。
「コーキさん、俺、なんのためにフリーランスやってるのかわかんなくなってきました」
■ ケンタの「事件」
「仕事は取れてる。こなせてる。でも……なんか、楽しくないんですよ」
ケンタの声に覇気がない。
「続けているのか」
「続けてます。でも毎朝起きるのがしんどくて。案件を開くのが怖くて。誰とも話してないし、家から出てないし。友達に連絡するのも、なんか……疲れちゃって」
「誰かに話したか」
「話せないですよ。フリーランスって自分で選んだことだし、こんなことで弱音吐いたら……なんか、みっともないじゃないですか」
俺はしばらく黙っていた。
「みっともなくない」
「え」
「誰だって、限界がある。それを無視し続けると、もっとまずいことになる」
ケンタは少し目を伏せた。
「……誰に話せばいいんですかね。こういうこと」
■ コーキの分析:「誰にも言えない」が一番危ない3つの理由
メンタルの問題を一人で抱え込む——これがフリーランスの最大のリスクだ。仕事の技術より、自分の状態を管理することの方が、長く続けるためには重要になる。
■ ケイイチロウの一言
そのとき、所長室のドアが開いた。
ケイイチロウが静かに出てきて、ケンタを見た。
🔍 ケイイチロウの一言
弱さを認められる者だけが、本当の強さを手に入れられる。助けを求めることは、敗北ではない。次の一手だ

ケンタは少しだけ、目が潤んだ。
「……俺、誰かに話していいんですかね」
「話していい」とケイイチロウは言った。「そのためのプロがいる」
そのとき——事務所のドアが開いた。
■ ミサキの依頼
「失礼しまーす」
ミサキだった。
今日は自撮り棒もカメラも持っていない。小さなトートバッグ一つ。表情が、いつもと違った。明るさの裏側にある何かが、今日は少し表に出ていた。
「ケンタさん、いたんだ。こんにちは」
「あ、ど、どうも……」
ケンタが少し驚いた顔をした。ミサキとケンタは、SNSを通じて面識があった。

ミサキはコーキを見た。
「コーキくん、今日ちゃんとした依頼があって来たんだけど。あとでいい?」
「ケンタの話が終わってからでいい」
「わかった」
ミサキはソファの端に静かに腰を下ろした。
■ 解決策:メンタルが限界になったときの「3つの出口」
一人で抱え込まない。それだけが、唯一の正解だ。
・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
・よりそいホットライン(SNS相談):https://comarigoto.jp/
まず話してみるだけでもいい。
「ケンタ、今日帰ったらオンラインカウンセリングのサイトを開くだけでいい。申し込まなくていい。見るだけでいい」
「……わかりました」
ケンタはコーヒーを飲み干して、ゆっくりと立ち上がった。
「話聞いてもらって、ありがとうございます」
「次また来い」
ケンタが帰っていった。
■ ケイイチロウとミサキ
事務所が静かになった。
ミサキはしばらく黙っていた。それから、静かに口を開いた。
「コーキくん、ちょっと外してもらえる? ケイイチロウさんと、二人で話したくて」
俺は少し考えてから、立ち上がった。
「わかった。廊下にいる」

ドアを閉める直前、ケイイチロウとミサキの目が合うのが見えた。
ケイイチロウの表情が、一瞬だけ——俺が今まで見たことのない表情になった。
廊下で、俺はドアに背をもたせかけた。
事務所の中の声は聞こえない。聞こうとも思わなかった。
ただ、時間だけが流れた。
五分が経った。十分が経った。
——そのドアが、勢いよく開いた。
ミサキが飛び出してきた。
俺はとっさに後ろにのいた。

ミサキの目から、涙が流れていた。
走りながら、ミサキは俺の顔を一瞬だけ見た。
何かを言いかけて——言わずに、階段を降りていった。
足音が遠ざかって、玄関のドアが閉まる音がした。
俺は事務所に戻った。
ケイイチロウが窓の外を見ていた。
「……何があった」
「お前が知る必要はない」
「知る必要はないかもしれない。でも、あいつが泣いていた」
ケイイチロウは、しばらく黙っていた。
「あの娘は——強い。それだけだ」
それ以上、何も言わなかった。
俺も、何も聞かなかった。
ただ、窓の外を見た。
雨が降り始めていた。
■ ルリのまとめ
棚の上のルリが、今日は窓の外を見ていた。

🐱 今日のまとめ
■ コーキの締め
夜、事務所に一人で残った。
ミサキのことを考えていた。
「高校の同級生のコーキくん」——ミサキはそう言った。でも俺には記憶がない。
あの涙は何だったのか。ケイイチロウは何を話したのか。
スマホを開いて、ミサキのYouTubeチャンネルをもう一度見た。
最新の動画のタイトルは「怪盗バロールの足跡を追って」だった。
——バロール。
聞き覚えのない名前だ。でも、どこかで引っかかる。
ケイイチロウの書棚に、一度だけ見かけた古いファイル。表紙に手書きで書かれていた文字——確か、「B」から始まる何かだった。
俺は立ち上がって、書棚に近づいた。
ファイルは、なかった。
片付けたのか。それとも——最初から、俺の見間違いだったのか。
窓の外、雨が強くなっていた。
次回:新しい依頼人、サクラ登場。コーキ探偵、「給与明細を初めてちゃんと読んだ話」の相談を受ける。
※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法務・金融・投資助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新情報と異なる場合があります。困ったときは専門窓口(よりそいホットライン:0120-279-338〈24時間無料〉・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556)にご相談ください。
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