※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。
四月になった。
ケンタはフリーランスとして動き始めてから半年が経ち、少しずつ「それらしい顔」をするようになってきた。案件もこなし、確定申告も乗り越え、詐欺にも引っかからなかった。
成長している。俺はそう思っていた。
「コーキさん、俺、利用されてたんですかね」
その言葉を聞くまでは。
■ ケンタの「事件」
「クラウドワークスで知り合った先輩フリーランサーがいて。シンジさんっていうんですけど」
ケンタがゆっくりと話し始めた。
「すごく面倒見が良くて、最初に仕事の取り方とか教えてくれたんですよ。『一緒にやろう』って言ってくれて、提案書とかも一緒に作ってたんです」
「それで」
「先週、そのクライアントとのやり取りを見てたら……納品した金額が、俺が受け取ってた金額の倍以上だったんです。シンジさんが半分以上抜いてて」
「気づいたのはいつだ」
「たまたま、クライアントから直接お礼のメールが来て。そこに金額が書いてあって。俺、20万の案件だと思ってたのに、実際は45万だったんです」
俺は少し黙ってから言った。
「シンジさんに確認したか」
「しました。『間に入ってる分のマージンは当然でしょ、業界の常識だよ』って言われて。笑いながら」

ケンタの目が、少し揺れた。
「……俺、なんか変ですかね。怒っていいのかどうかもわからなくて」
「怒っていい」
■ コーキの分析:「いい人」による搾取が見えにくい3つの理由
善意と搾取は、表面上よく似ている。違いを見抜くのが難しいのは、構造的な理由がある。

■ ケイイチロウの一言
所長室からケイイチロウが出てきた。
🔍 ケイイチロウの一言
善意と搾取は、見た目が同じだ。違いはただ一つ——相手が、自分の利益を優先しているかどうかだ

ケンタはしばらく考えてから言った。
「……シンジさんは、自分の利益を優先してたんですよね」
「情報を隠し、合意なくマージンを取った。それが答えだ」
「じゃあ、俺は怒っていいんですね」
「怒っていい。そして、次からどうするかを決めろ」
■ 解決策:搾取される関係を見抜く「3つの確認」
人間関係は「感情」で測ると見誤る。「事実」で確認する習慣を持つことが、自分を守る最初の一歩だ。

「ケンタ、シンジさんが悪人かどうかはわからない。でも、お前が不利益を受けたのは事実だ。感情より先に、事実で判断することを覚えろ」
「……シンジさんに、直接言いに行った方がいいですか」
「言いたいなら言っていい。ただ、取り戻せる金額と、使うエネルギーを天秤にかけろ。それよりも、次の案件では最初から条件を確認する方が建設的だ」
ケンタは少し悔しそうな顔をしてから、頷いた。
「……わかりました。次は、ちゃんと確認します」
■ ルリのまとめ
棚の上のルリが、静かにケンタを見ていた。

🐱 今日のまとめ
■ コーキの締め
ケンタが帰った後、俺はしばらく事務所の天井を見ていた。
利用される側に問題があるわけじゃない。ただ、知らないと繰り返す。知っていれば、最初から防げる。
スマホに通知が来た。
コーキ探偵事務所の公式SNSアカウントに、コメントがついていた。
「コーキくんのこと、ずっと応援してるよ!がんばれ! byミサキ」
俺はそのコメントを見て、少し考えた。
ミサキは俺のことを「コーキくん」と呼ぶ。名前で呼ぶということは、どこかで知り合ったことがある——はずだ。でも、どこで。

ケイイチロウが所長室のドアを少し開けて言った。
「その娘のことを、調べようとするな」
振り返ると、もうドアは閉まっていた。
——なぜ今、そんなことを言った。
俺が考えていることを、読んでいたのか。
次回:ケンタ、一人暮らしの生活管理が崩壊して「詰んだ」とやってくる。
※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法務・金融・投資助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新情報と異なる場合があります。困ったときは公的窓口(消費生活センター・法テラス・労働基準監督署等)にご相談ください。
