【第10話】コーキ探偵、「いいやつと思っていた人が搾取していた問題」の相談を受ける

搾取する先輩フリーランスに気づくシーン 未分類

※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。


四月になった。

ケンタはフリーランスとして動き始めてから半年が経ち、少しずつ「それらしい顔」をするようになってきた。案件もこなし、確定申告も乗り越え、詐欺にも引っかからなかった。

成長している。俺はそう思っていた。

「コーキさん、俺、利用されてたんですかね」

その言葉を聞くまでは。


■ ケンタの「事件」

「クラウドワークスで知り合った先輩フリーランサーがいて。シンジさんっていうんですけど」

ケンタがゆっくりと話し始めた。

「すごく面倒見が良くて、最初に仕事の取り方とか教えてくれたんですよ。『一緒にやろう』って言ってくれて、提案書とかも一緒に作ってたんです」

「それで」

「先週、そのクライアントとのやり取りを見てたら……納品した金額が、俺が受け取ってた金額の倍以上だったんです。シンジさんが半分以上抜いてて」

「気づいたのはいつだ」

「たまたま、クライアントから直接お礼のメールが来て。そこに金額が書いてあって。俺、20万の案件だと思ってたのに、実際は45万だったんです」

俺は少し黙ってから言った。

「シンジさんに確認したか」

「しました。『間に入ってる分のマージンは当然でしょ、業界の常識だよ』って言われて。笑いながら」

ケンタが搾取に気づいて驚くシーン

ケンタの目が、少し揺れた。

「……俺、なんか変ですかね。怒っていいのかどうかもわからなくて」

「怒っていい」


■ コーキの分析:「いい人」による搾取が見えにくい3つの理由

善意と搾取は、表面上よく似ている。違いを見抜くのが難しいのは、構造的な理由がある。

⚠️ 理由① 「恩」を感じると、不公平が見えなくなる
シンジさんは最初、仕事の取り方を教えてくれた。その「恩」が判断を鈍らせた。「あの人に世話になったから」という気持ちが、不公平な条件を受け入れさせる。親切にしてから搾取するのは、意図的かどうかに関わらず、よくある構造だ。
⚠️ 理由② 「業界の常識」という言葉で正当化される
「マージンは常識」「こういうものだよ」——これらの言葉は、確認を止める効果がある。しかし常識は、人によって都合よく定義される。本当の常識なら、最初から金額を開示して合意を取るはずだ。透明性がない時点で、その「常識」は疑っていい。
⚠️ 理由③ 「良い人」ほど、指摘しにくい
普段が優しい人、世話になっている人、人望がある人——こういう相手に対して「それはおかしい」と言うのは、心理的に難しい。指摘すれば関係が壊れるかもしれない。その怖さが、搾取を続けさせる。相手が「いい人」であることと、関係が「公平である」ことは、まったく別の話だ。
コーキが契約書を確認するシーン

■ ケイイチロウの一言

所長室からケイイチロウが出てきた。

🔍 ケイイチロウの一言

善意と搾取は、見た目が同じだ。違いはただ一つ——相手が、自分の利益を優先しているかどうかだ

ケイイチロウが警告するシーン

ケンタはしばらく考えてから言った。

「……シンジさんは、自分の利益を優先してたんですよね」

「情報を隠し、合意なくマージンを取った。それが答えだ」

「じゃあ、俺は怒っていいんですね」

「怒っていい。そして、次からどうするかを決めろ」


■ 解決策:搾取される関係を見抜く「3つの確認」

人間関係は「感情」で測ると見誤る。「事実」で確認する習慣を持つことが、自分を守る最初の一歩だ。

✅ 確認① 自分が提供しているものと、得ているものを数値で見る
「なんとなく損している気がする」では判断できない。時間・成果物・金額を数値で記録しておくと、関係の公平さが客観的に見えてくる。今回のケンタのように「たまたま金額を知った」では遅い。最初から確認できる仕組みを持つことが大事だ。
✅ 確認② 条件は最初に文字で確認する
口約束は後から「そんなこと言っていない」になる。金額、マージン、クレジット(誰の名前で出すか)——これらは最初にメッセージや契約書で確認しておく。面倒でも、一行のテキストが後のトラブルを防ぐ。
✅ 確認③ 「断っても関係が続くか」を試す
健全な関係は、断っても壊れない。「今回は難しい」と言ったとき、相手がどう反応するかを見ると、関係の本質がわかる。不機嫌になる、急に連絡が減る——それは、あなたが必要とされていたのではなく、あなたの労働力が必要とされていただけかもしれない。
シンジが笑顔で話すシーン

「ケンタ、シンジさんが悪人かどうかはわからない。でも、お前が不利益を受けたのは事実だ。感情より先に、事実で判断することを覚えろ」

「……シンジさんに、直接言いに行った方がいいですか」

「言いたいなら言っていい。ただ、取り戻せる金額と、使うエネルギーを天秤にかけろ。それよりも、次の案件では最初から条件を確認する方が建設的だ」

ケンタは少し悔しそうな顔をしてから、頷いた。

「……わかりました。次は、ちゃんと確認します」


■ ルリのまとめ

棚の上のルリが、静かにケンタを見ていた。

ルリのまとめシーン

🐱 今日のまとめ

「良い人」による搾取は、恩と常識という言葉で見えにくくなる
関係の公平さは感情ではなく、数値と事実で確認する
条件は最初に文字で残す。口約束は後から消える

■ コーキの締め

ケンタが帰った後、俺はしばらく事務所の天井を見ていた。

利用される側に問題があるわけじゃない。ただ、知らないと繰り返す。知っていれば、最初から防げる。

スマホに通知が来た。

コーキ探偵事務所の公式SNSアカウントに、コメントがついていた。

「コーキくんのこと、ずっと応援してるよ!がんばれ! byミサキ」

俺はそのコメントを見て、少し考えた。

ミサキは俺のことを「コーキくん」と呼ぶ。名前で呼ぶということは、どこかで知り合ったことがある——はずだ。でも、どこで。

ケイイチロウが最後のアドバイスをするシーン

ケイイチロウが所長室のドアを少し開けて言った。

「その娘のことを、調べようとするな」

振り返ると、もうドアは閉まっていた。

——なぜ今、そんなことを言った。

俺が考えていることを、読んでいたのか。

次回:ケンタ、一人暮らしの生活管理が崩壊して「詰んだ」とやってくる。


※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。


【ご注意】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法務・金融・投資助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新情報と異なる場合があります。困ったときは公的窓口(消費生活センター・法テラス・労働基準監督署等)にご相談ください。