物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。
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事務所に差し込む午後の光が、積み上げた書類を斜めに照らしていた。
開業届を出した翌週、ケンタは少し背筋が伸びた様子で事務所に現れた。
「コーキさん、やりましたよ。開業届、出してきました」
「早かったな」
「freee使ったら、思ったより簡単で。屋号も決めました。『田所デザイン工房』です」
「悪くない」
俺がそう言うと、ケンタは少し照れたように頭をかいた。そして——すぐに困り顔になった。
「……で、仕事ってどうやって取ればいいんですかね」

■ ケンタの「疑問」
「開業届は出した。でも、仕事が来ない」
ケンタがソファに座りながら、ぼそっと言った。
「当たり前だ。開業届を出しても、誰も仕事を持ってきてはくれない」
「じゃあどうするんすか。SNSで発信すればいいですか。知り合いに声をかけるとか」
「それも一つの手だ。ただ、ゼロから始めるなら、比較的入りやすいルートがある」
「確実なルート……」
ケンタは身を乗り出した。
「フリーランス向けのマッチングサービスだ。クライアントが仕事を発注していて、フリーランスが受注する。実績がなくても登録できる」
「え、実績なしでも?」
「登録できる。ただし、仕事を取るにはプロフィールと提案文を整える必要がある」

■ コーキの分析:最初の仕事でつまずく3つの理由
フリーランスになったはいいが、「最初の一件」が取れずに止まってしまう人は多い。原因は決まっている。

■ ケイイチロウの一言
所長室からケイイチロウが姿を見せた。コーヒーカップを手に、静かに言った。
🔍 ケイイチロウの一言
最初の仕事は、稼ぐためではなく、信頼の証明書を手に入れるためにある。
ケンタはしばらく黙って、その言葉を噛み締めていた。
「……証明書、か」
「実績ゼロの人間が信用を得るには、まず一つやり切るしかない。それだけだ」

■ 解決策:最初の仕事の取り方「3ステップ」
難しく考えなくていい。まずやることは3つだ。
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「ケンタ、最初の案件は練習試合だと思え。試合に出なければ、うまくはならない」
「……わかりました。まず登録してみます」
「プロフィールを書いたら見せろ。添削してやる」
ケンタは少し驚いた顔をして、それからにっこりした。
「……コーキさんって、意外と面倒見いいですよね」
「うるさい」
■ 始める前に確認:トラブルを防ぐチェックリスト
クラウドソーシングで最初の仕事を取る前に、必ず確認しておきたいことがある。
フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託)に相談する。無料で専門家に対応方法を聞ける。
■ ルリのまとめ
棚の上のルリが、今日は少し目を細めてこちらを見ていた。
🐱 今日のまとめ

■ コーキの締め
ケンタが帰ったのは、夕方になってからだった。
スマホで何かを調べながら歩いて帰る背中を窓から見送って、俺はコーヒーを飲み直した。
開業届を出して、屋号を決めて、今日はサービスに登録した。
——三週間前まで「まあいっか」しか言わなかった男が、確実に動いている。
そのとき、事務所のドアが静かに開いた。
ノックもなかった。
「……お邪魔しまーす」
聞き覚えのある声に、俺は振り返った。
ミサキだった。
自撮り棒を折り畳んで脇に挟み、大きなカメラバッグを肩にかけて、事務所の入口に立っていた。
「なんで知ってる、ここの場所を」
「SNSで調べた。看板、写真に撮られてたよ」
俺はため息をついた。
「何の用だ」
「その前にさ——高校の同級生が探偵やってるって、びっくりしたんだよね。東雲学院、同じだったじゃない?」
俺は少し間を置いた。
東雲学院。俺の出身校だ。間違いない。
しかし——この顔に、記憶がない。
あれだけ派手な人間を、三年間忘れていたとは思えない。何かが噛み合わない感覚があったが、今は深く考える気にならなかった。
「……取材なら断る」
「えー。じゃあ話だけでも聞いて。取材。コーキくんの探偵事務所、動画に出てもいい? チャンネル登録者、最近伸び悩んでて」
「断る」
「えー」
ミサキはそう言いながら、許可も得ずにソファに腰を下ろした。
ケイイチロウが所長室から顔だけ出して、ミサキを一瞥してから俺を見た。
その目が「これはまずいことになりそうだな」と言っていた。
——俺も、そう思っていた。

次回:ケンタ、「単価が低くてやっていけない」と悩みを持ち込む。
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