【第8話】確定申告で詰んだ——フリーランス1年目が今すぐやるべき3ステップ

第8話アイキャッチ:確定申告で詰んだ問題 仕事・就活の罠

※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。

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二月の終わり。事務所の窓に冷たい雨が当たっていた。

俺はデスクの上に積み上がった領収書の束を眺めながら、コーヒーを飲んでいた。確定申告の時期だ。探偵業も個人事業である以上、無縁ではいられない。

そのとき、ドアが勢いよく開いた。

「コーキさんっ、税金で人生終わりそうです」

ケンタだった。顔が青い。手にはレシートやら紙やらをぐちゃぐちゃに握りしめている。

「落ち着け。座れ」

「落ち着いてられないんですよ。確定申告、来月締め切りじゃないですか。何も準備してないんです。全部」

「……全部」

「全部です」

ケンタがぐちゃぐちゃの領収書を持ち込むシーン

■ ケンタの「事件」

ケンタが机の上に広げたのは、過去数ヶ月分のレシートと、未整理のまま放置されたスマホのメモだった。

「売上はいくらだ」

「えっと……クラウドワークスの管理画面に出てたやつが……たぶん30万くらいだと思うんですけど、正確にはわからなくて」

「経費の記録は」

「……してないです」

「領収書は」

「これです」とケンタが握りしめた紙の束を差し出した。「コンビニのレシートとか、ぐちゃぐちゃで」

俺はため息をついた。

「freeeは使っていると言っていたが」

「インストールはしました。でも全然入力してなくて。めんどくさくて後回しにしてたら……」

「後回しにした結果が今だ」

「わかってます……」

ケンタは机に突っ伏した。

ケンタが確定申告でパニックになるシーン

■ コーキの分析:確定申告で詰む3つの理由

フリーランス1年目が確定申告でパニックになるのは、珍しくない。原因はほぼ決まっている。

⚠️ 理由① 日頃の記録をしていない
確定申告は「一年分の収支をまとめる作業」だ。日々の入金・出金をその都度記録していれば、申告期間は数時間で終わる。しかしサボり続けると、一年分を一気に遡る羽目になる。レシートは時間が経つほど読めなくなり、記憶は薄れ、取引履歴を掘り起こすだけで何日もかかる。
⚠️ 理由② 何が経費になるかわからない
フリーランスは、仕事に関係する支出を「経費」として申告できる。交通費、通信費、書籍代、パソコン代——これらが経費になれば、課税される所得が減り、税金が安くなる。しかし「どこまで経費にしていいか」がわからず、全部諦めてしまう人が多い。結果として、払わなくてよかった税金を払い続ける。
⚠️ 理由③ 期限ギリギリまで先延ばしにする
「まだ時間がある」「来週やろう」——この言葉が命取りになる。確定申告の期限は毎年3月15日。ギリギリになってから動くと、書類が揃わず、税務署の窓口は混雑し、e-Taxのシステムが重くなる。余裕のある2月中に動き始めることが、最大のリスクヘッジだ。

ケンタのケースは三つ全部当てはまっていた。

コーキが会計ソフトを説明するシーン

■ ケイイチロウの一言

奥から出てきたケイイチロウが、ケンタの有様をひと目見て言った。

🔍 ケイイチロウの一言

税金から逃げようとする者は、税金に追いかけられる。向き合う者だけが、税金を味方にできる。

ケンタは突っ伏したまま、くぐもった声で言った。

「……向き合います」

「今すぐ、だ」

ケイイチロウの一言シーン

■ 解決策:今日からできる「確定申告3ステップ」

もう時間はない。でも、まだ間に合う。今すぐやることは3つだ。

✅ ステップ① 会計ソフトに全部入力する
クラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードを連携するだけで、取引が自動で取り込まれる。マネーフォワード クラウド確定申告なら、入力から申告書の作成まで一括でできる。紙の領収書も写真を撮れば管理できる。まず今日、全部の取引を入力することから始めよう。
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✅ ステップ② 経費を洗い出す
フリーランスが経費にできる主なものはこれだ。

・仕事用のパソコン・スマホ・周辺機器
・通信費(ネット回線・スマホ代の仕事分)
・書籍・セミナー・オンライン講座代
・交通費(仕事関連の移動)
・作業スペース費用(カフェ代なども一部)

「なんとなく経費にしにくい」と感じているものも、仕事との関連を説明できれば経費になる可能性がある。迷ったら、会計ソフトの仕訳サポートやガイドを参考にしよう。
✅ ステップ③ 青色申告で最大65万円の控除を取る
第5話で話した通り、青色申告承認申請書を出していれば、最大65万円の特別控除が受けられる。これだけで数万円単位の節税になる。申請書を出し忘れた場合は今年は白色申告になるが、来年に向けて今すぐ申請書を提出しておくことが重要だ。

「ケンタ、今年は間に合わない部分もある。でも来年に向けて、今日から記録を続けることが一番大事だ」

「……わかりました。マネーフォワード、ちゃんと使います。今度こそ」

「毎週一回、入力する日を決めろ。習慣にしない限り、また来年同じことになる」

ケンタは神妙な顔でスマホを取り出し、カレンダーに「毎週日曜:帳簿入力」と打ち込んだ。


■ ルリのまとめ

棚の上のルリが、今日は少し呆れたようにケンタを見下ろしていた。

🐱 今日のまとめ

確定申告で詰む原因は「記録していない」「経費を知らない」「先延ばし」の3つ
会計ソフトを使えば、銀行連携で入力が自動化できる——今日から始めよう
青色申告の65万円控除は、知っているかどうかで毎年の税金が変わる
ルリのまとめシーン

■ コーキの締め

ケンタが帰ったのは夕方だった。

スマホに会計ソフトのアプリを入れ直して、その場で過去の取引を入力し始めていた。帰り際の顔は、来たときより少し明るくなっていた。

俺がコーヒーを淹れ直していると、事務所のドアが音もなく開いた。

——またか。

「コーキくん! 聞いた聞いた、確定申告の話してたんでしょ」

ミサキだった。今日は大きなカメラではなく、小さなショルダーバッグだけを持っていた。

「なんで知ってる」

「窓、開いてたから。ちょっと聞こえちゃって」

「盗み聞きか」

「たまたま通りかかっただけ!あのさ、私もYouTubeの収益で確定申告が必要になってきたんだけど、どうすればいい?」

俺は少し考えてから言った。

「マネーフォワード、使え。今日の話は全部そこに入ってる」

「えー、それだけ?」

「それだけだ。帰れ」

「ひどい!」

ミサキはぶつぶつ言いながらも、スマホでマネーフォワードを検索し始めていた。

——「たまたま通りかかった」。

事務所は路地の奥にある。たまたま通りかかる場所じゃない。

俺はそのことを、ミサキには言わなかった。

ミサキが窓の外から盗み聞きするシーン

次回:ケンタ、「SNSで知り合った人に騙されかけた」と青ざめてやってくる。


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