【第7話】時給300円の現実——フリーランスが単価を上げる4つのステップ

第7話アイキャッチ:フリーランス単価問題 仕事・就活の罠

※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。

※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。


クラウドワークスに登録してから、二週間が経った。

——その前に、少し前の話をしておく必要がある。

あの日、ノックなしで事務所に入ってきた女——ミサキとかいったか——は、結局一時間ほど居座った後、「また来まーす」と言って帰っていった。

断ったはずなのに、また来ると言っている。

妙に気になることがあった。帰り際、彼女が鞄を持って立ち上がった瞬間、俺は一瞬だけ「どこかで会ったことがあるような」と感じた。だが、すぐに打ち消した。あれだけ派手な人間を忘れるはずがない。きっと気のせいだ。

ケンタが帰り、ミサキも帰った後、俺が一人でコーヒーを飲んでいると、ケイイチロウが所長室から静かに出てきた。

「あの娘のことは、どこで知ったんだ」

「知らない。向こうが勝手に来た。SNSで事務所の場所を調べたらしい」

「そうか」

ケイイチロウはしばらく窓の外を見ていた。その横顔に、いつもと違う何かがあった気がした。

「事務所に来るのは構わない」と、ケイイチロウは静かに言った。「ただ——あの娘に、余計なことを教えるな」

「余計なこと、とは」

「まだ知らなくていいことだ」

それだけ言って、所長室に戻った。

俺は何かを聞き損ねた気がしたが、何を聞けばいいのかわからなかった。

窓の外、事務所の向かいのビルの陰に、さっきから動かない人影があることに、このとき俺はまだ気づいていなかった。

ケイイチロウが謎の警告を発するシーン

クラウドワークスに登録してから、二週間が経った。

ケンタは毎日案件を漁って、少しずつ仕事を取り始めていた。バナー制作、SNS投稿用のデザイン、簡単なチラシ。

それ自体は悪くない。問題は——

「コーキさん、俺これ時給300円くらいだと思うんですけど」

ケンタが事務所のドアを開けるなり、そう言った。

■ ケンタの「事件」

「一件2,000円のバナー制作、6時間かかったんですよ」

ケンタがスマホの作業記録を見せながら言った。

「……2,000円で6時間か」

「時給333円ですよ。コンビニバイトの方がよっぽど稼げる」

俺は腕を組んだ。

「仕事は取れている。でも稼げていない、ということか」

「そうなんです。このままじゃフリーランスで食っていけない気がしてきて」

「焦る気持ちはわかる。ただ、これは構造的な問題だ。一つずつ整理しよう」

ケンタはため息をつきながら、椅子に深く座った。

ケンタが時給を計算して青ざめるシーン

■ コーキの分析:単価が上がらない3つの理由

フリーランスが「稼げない」と感じるとき、原因はたいてい決まっている。

⚠️ 理由① 参入しやすい仕事を受けている
バナー制作、文字入れ、簡単なデータ入力——これらは参入障壁が低く、競合が多い。需要はあるが、供給も多いため単価が下がりやすい。「自分にしかできない」領域がなければ、価格競争に巻き込まれ続ける。
⚠️ 理由② 実績・ポートフォリオが弱い
クライアントが単価を決めるとき、「この人に頼む価値があるか」を判断する。実績が少ない、ポートフォリオが薄い状態では、相手はリスクを感じる。リスクを取ってもらうためには、単価を下げるしか選択肢がなくなる。
⚠️ 理由③ 単価交渉をしていない
提示された金額をそのまま受け入れている人は多い。しかし、クライアントも「交渉されるかも」と思って少し低めに提示していることがある。丁寧に「〇〇円でいただけますか」と伝えるだけで、通ることもある。交渉しない限り、単価は上がらない。

ケンタのケースは①と②が重なっていた。参入しやすい仕事を、実績なしで受け続けていた。これでは時間を切り売りするしかない。

コーキがAIツール活用を説明するシーン

■ ケイイチロウの一言

所長室のドアが開いて、ケイイチロウが静かに出てきた。

🔍 ケイイチロウの一言

値段は、価値の翻訳だ。価値を上げずに値段だけ上げようとするから、話がこじれる。

ケンタは手帳を取り出して、そのまま書き留めた。

「……価値を上げる、か」

「そうだ。単価交渉より先に、まず自分の価値を上げることを考えろ」

ケイイチロウの一言シーン

■ 解決策:単価を上げる「4つのステップ」

単価を上げるのに魔法はない。ただ、順番がある。

✅ ステップ① 専門性を一つ決めて深める
「デザイン全般できます」ではなく、「ECサイトの商品画像制作に特化しています」のように絞る。専門性が高いほど希少性が上がり、単価交渉の余地が生まれる。今の自分の仕事の中で、一番得意なもの・一番需要がありそうなものを選んで、そこを集中的に磨く。

スキルを体系的に身につけたいなら、オンライン講座を活用するのが近道だ。
👉 スタディング公式サイトを見る

※スタディング(オンラインで学べるスキルアップ講座)
※広告ではありません

✅ ステップ② AIツールを武器にして、作業時間を半分にする
「6時間かかった」という問題は、スキルだけでなく作業効率にも原因がある。今のフリーランス市場では、AIツールを使いこなせるかどうかが、競争力に影響しはじめている。

デザインの仕事なら画像生成AIで素材を作り、ライティングの仕事ならAIで構成を組んでから自分の言葉に整える。こうした使い方で、作業時間を大きく短縮できるケースがある。

「時給300円」だったバナー制作も、AIを活用して作業を効率化できれば、同じ時間でより多くの成果を出せるようになる。さらに「AIを使いこなせるデザイナー」という強み自体が差別化になる。

「AIに仕事を奪われる」と心配する人もいる。だからこそ、早めに使い始めて自分の武器にしておくことが重要だ。

【AI利用時の注意】AIを仕事で使う場合は、クライアントの許可・守秘義務・個人情報・著作権・各AIサービスの利用規約を事前に確認すること。未公開の資料や個人情報をそのまま入力しないよう注意が必要だ。
✅ ステップ③ ポートフォリオを「見せられる形」に整える
実績が少ないうちは、自主制作でもいい。「架空のクライアント向けに作った作品」をポートフォリオに加える。大事なのは「この人に頼めばこういうものが出てくる」とイメージさせること。ノートPCのフォルダに眠っている練習作品を、今すぐ整理して公開しよう。
✅ ステップ④ 単価交渉を「一言」試してみる
次の案件から、提示金額に対して「〇〇円でご対応できますか?」と一言添える。理由を長々と述べる必要はない。断られても関係は壊れない。通ればそれだけで収入が増える。まず試してみることだ。
⚠️ 低単価案件を受けるときの注意
「最初は実績づくり」で低単価を受けること自体は悪くない。ただし、無制限修正・無料でのテスト制作・納期や作業範囲が曖昧な案件は、消耗するだけで実績にもならないことが多い。受ける前に条件を確認しよう。
📋 案件を受ける前に確認すること(フリーランス法)
作業範囲・納期・報酬・支払日・修正回数・実績公開の可否を、事前に書面やメッセージで確認する。曖昧なまま始めると、追加修正や未払いで消耗しやすい。

困ったときはフリーランス・トラブル110番へ。報酬未払い・一方的な減額・あいまいな契約などを無料で相談できる(運営:厚生労働省委託)。

「ケンタ、今の仕事をやめろとは言っていない。こなしながら、専門性を磨け。それにAIを組み合わせれば、同じ時間で出せる成果が変わる」

「AIって、なんか怖くないですか。使い方わからないし」

「怖いのは最初だけだ。使い始めたら、なんであんなに怖がっていたのかわからなくなる。お前が6時間かけたバナー、AIを使えば2時間で終わったかもしれない」

「……マジっすか」

「試してみればわかる」

ケンタは少し黙ってから、頷いた。


■ ルリのまとめ

棚の上のルリが、じっとケンタを見ていた。

🐱 今日のまとめ

単価が低い原因は「誰でもできる仕事」「実績不足」「交渉していない」の3つ
AIツールで作業時間を短縮すれば、単価が同じでも実質的な稼ぎは増える
「AI×専門スキル」の組み合わせが、これからのフリーランスの最強の武器になる
ルリのまとめシーン

■ コーキの締め

ケンタが帰り際に、ぽつりと言った。

「コーキさんって、フリーランスじゃないですよね。なんでこんなに詳しいんですか」

「依頼人に教えてもらった。いろんなやつの失敗談を聞いてきた」

「……じゃあ俺の失敗談も、いつか誰かの役に立つんですかね」

「立つ。だから今、ちゃんと失敗しておけ」

ケンタは笑って、事務所を出て行った。

稼げない時期は、誰にでもある。大事なのは、その時間をただ耐えるのか、次のための投資にするのか——その違いだけだ。

次回:ケンタ、確定申告の時期が近づいて「詰んだ」と青ざめてやってくる。


※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。


【ご注意】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法務・金融・投資助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新情報と異なる場合があります。困ったときは公的窓口(消費生活センター・法テラス・日本学生支援機構等)にご相談ください。