※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。
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クラウドワークスに登録してから、二週間が経った。
——その前に、少し前の話をしておく必要がある。
あの日、ノックなしで事務所に入ってきた女——ミサキとかいったか——は、結局一時間ほど居座った後、「また来まーす」と言って帰っていった。
断ったはずなのに、また来ると言っている。
妙に気になることがあった。帰り際、彼女が鞄を持って立ち上がった瞬間、俺は一瞬だけ「どこかで会ったことがあるような」と感じた。だが、すぐに打ち消した。あれだけ派手な人間を忘れるはずがない。きっと気のせいだ。
ケンタが帰り、ミサキも帰った後、俺が一人でコーヒーを飲んでいると、ケイイチロウが所長室から静かに出てきた。
「あの娘のことは、どこで知ったんだ」
「知らない。向こうが勝手に来た。SNSで事務所の場所を調べたらしい」
「そうか」
ケイイチロウはしばらく窓の外を見ていた。その横顔に、いつもと違う何かがあった気がした。
「事務所に来るのは構わない」と、ケイイチロウは静かに言った。「ただ——あの娘に、余計なことを教えるな」
「余計なこと、とは」
「まだ知らなくていいことだ」
それだけ言って、所長室に戻った。
俺は何かを聞き損ねた気がしたが、何を聞けばいいのかわからなかった。
窓の外、事務所の向かいのビルの陰に、さっきから動かない人影があることに、このとき俺はまだ気づいていなかった。

クラウドワークスに登録してから、二週間が経った。
ケンタは毎日案件を漁って、少しずつ仕事を取り始めていた。バナー制作、SNS投稿用のデザイン、簡単なチラシ。
それ自体は悪くない。問題は——
「コーキさん、俺これ時給300円くらいだと思うんですけど」
ケンタが事務所のドアを開けるなり、そう言った。
■ ケンタの「事件」
「一件2,000円のバナー制作、6時間かかったんですよ」
ケンタがスマホの作業記録を見せながら言った。
「……2,000円で6時間か」
「時給333円ですよ。コンビニバイトの方がよっぽど稼げる」
俺は腕を組んだ。
「仕事は取れている。でも稼げていない、ということか」
「そうなんです。このままじゃフリーランスで食っていけない気がしてきて」
「焦る気持ちはわかる。ただ、これは構造的な問題だ。一つずつ整理しよう」
ケンタはため息をつきながら、椅子に深く座った。

■ コーキの分析:単価が上がらない3つの理由
フリーランスが「稼げない」と感じるとき、原因はたいてい決まっている。
ケンタのケースは①と②が重なっていた。参入しやすい仕事を、実績なしで受け続けていた。これでは時間を切り売りするしかない。

■ ケイイチロウの一言
所長室のドアが開いて、ケイイチロウが静かに出てきた。
🔍 ケイイチロウの一言
値段は、価値の翻訳だ。価値を上げずに値段だけ上げようとするから、話がこじれる。
ケンタは手帳を取り出して、そのまま書き留めた。
「……価値を上げる、か」
「そうだ。単価交渉より先に、まず自分の価値を上げることを考えろ」

■ 解決策:単価を上げる「4つのステップ」
単価を上げるのに魔法はない。ただ、順番がある。
※スタディング(オンラインで学べるスキルアップ講座)
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「最初は実績づくり」で低単価を受けること自体は悪くない。ただし、無制限修正・無料でのテスト制作・納期や作業範囲が曖昧な案件は、消耗するだけで実績にもならないことが多い。受ける前に条件を確認しよう。
作業範囲・納期・報酬・支払日・修正回数・実績公開の可否を、事前に書面やメッセージで確認する。曖昧なまま始めると、追加修正や未払いで消耗しやすい。
困ったときはフリーランス・トラブル110番へ。報酬未払い・一方的な減額・あいまいな契約などを無料で相談できる(運営:厚生労働省委託)。
「ケンタ、今の仕事をやめろとは言っていない。こなしながら、専門性を磨け。それにAIを組み合わせれば、同じ時間で出せる成果が変わる」
「AIって、なんか怖くないですか。使い方わからないし」
「怖いのは最初だけだ。使い始めたら、なんであんなに怖がっていたのかわからなくなる。お前が6時間かけたバナー、AIを使えば2時間で終わったかもしれない」
「……マジっすか」
「試してみればわかる」
ケンタは少し黙ってから、頷いた。
■ ルリのまとめ
棚の上のルリが、じっとケンタを見ていた。
🐱 今日のまとめ

■ コーキの締め
ケンタが帰り際に、ぽつりと言った。
「コーキさんって、フリーランスじゃないですよね。なんでこんなに詳しいんですか」
「依頼人に教えてもらった。いろんなやつの失敗談を聞いてきた」
「……じゃあ俺の失敗談も、いつか誰かの役に立つんですかね」
「立つ。だから今、ちゃんと失敗しておけ」
ケンタは笑って、事務所を出て行った。
稼げない時期は、誰にでもある。大事なのは、その時間をただ耐えるのか、次のための投資にするのか——その違いだけだ。
次回:ケンタ、確定申告の時期が近づいて「詰んだ」と青ざめてやってくる。
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※物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法務・金融・投資助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新情報と異なる場合があります。困ったときは公的窓口(消費生活センター・法テラス・日本学生支援機構等)にご相談ください。

