Amazonのアソシエイトとして、コーキの社会人前夜相談室は適格販売により収入を得ています。
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※物語パートに登場する人物・団体・会社名は創作上のものです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※住宅ローンの条件・金利は金融機関や時期により異なります。具体的な借入判断は金融機関・専門家にご確認ください。
モデルルームで提示される月々の返済額だけを見てしまうと、物件価格に含まれない諸費用や維持費を見落としたまま契約に進んでしまうことがあります。
📝 この記事でわかること
- 物件価格以外にかかる費用の全体像
- 「借りられる額」と「返せる額」の違い
- 契約前に必ず計算しておくこと
■ オープニング
十二月の初め。ヒロが差し出したのは、つやつやした分厚いパンフレットだった。
表紙には、夕日に照らされた新築マンションと、笑顔の家族。
「……先週、駅前にモデルルームができたんです。サクラさんと通りかかったら、アンケートだけでもって言われて」
「入ったのか」
「入りました。……そしたら、すごかったんです。キッチンも、お風呂も、眺望も。営業の人に収入を聞かれて答えたら、『ヒロさんなら十分買えますよ』って。月々の返済額を見たら、今の家賃とほとんど同じで」
ヒロはメガネの奥の目を輝かせた。
「家賃並みの返済で、資産が手に入るんですよ?これ、借りてる方が損じゃないですか?」
「……お前、この前まで『NISAはリスクが』って3ヶ月動けなかった男だよな?」

■ 問題提示
「営業の人が言ってたんです。『家賃は捨てるお金、ローンは資産になるお金』って。それに『金利が上がる前の今が買い時』だって」
「なるほど。で、いくらの物件だ」
「4,980万円です。頭金なしのフルローンで、35年。月々の返済が今の家賃プラス5千円くらいで」
「サクラは何て言ってたんだ」
「『素敵だね』って言ってました。……あ、でも帰り道はちょっと静かでした」
「だろうな」
コーキはパンフレットをめくった。どのページにも、光の入る角度まで計算された写真が並んでいる。
「ヒロ。お前が見せられたのは『夢』の部分だけだ。値札の全部は、まだ見てない」
「え?価格、ちゃんと書いてありますよ。4,980万円って」
「それは物件の値段だ。『買う』の値段じゃない。」

■ コーキの分析:「家賃並み」の魔法が解ける3つの理由
コーキはホワイトボードに数字を書き始めた。
⚠️ 理由① 「家賃並みの返済額」には、含まれていないものがある
月々のローン返済額の比較には、持ち家の維持費が入っていないことが多い。
・購入時の諸費用:登記費用・ローン手数料・税金など、物件価格の数%〜が別途かかる(数百万円規模)
・毎年かかるもの:固定資産税・都市計画税
・マンションなら毎月:管理費・修繕積立金(しかも修繕積立金は築年数とともに上がるのが一般的)
・戸建てなら:外壁・屋根・設備の修繕費を自分で積み立てる必要がある
これらを足すと、「家賃並み」は「家賃プラス数万円」に化けることが多い。
⚠️ 理由② 35年ローンの本当の重さは「総返済額」と「変化への弱さ」
・金利がつく以上、総返済額は物件価格より大きくなる。金利水準によっては、数百万円〜1千万円以上の利息を払うこともある
・変動金利は将来上がる可能性があり、上がれば返済額も増える
・そして最大のリスクは金利より人生の変化だ。転職、収入減、転勤、家族構成の変化——35年の間、何も起きない人生はほぼない。ローンは「今の収入が35年続く」前提で組んではいけない
⚠️ 理由③ 「今が買い時」は、いつの時代も言われている
「金利が上がる前に」「価格が上がる前に」「増税前に」——販売側の「今が買い時」は、季節の挨拶のようなものだ。
本当の買い時は市場が決めるものではなく、自分の人生の側で決まる。住む場所が定まり、家族の形が定まり、収入の見通しが立ち、頭金と諸費用を貯めた上で、余裕を持って返せる——その条件が揃ったときが、その人の買い時だ。

■ ケイイチロウの一言
ケイイチロウが、パンフレットの家族写真を見て言った。
「モデルルームが売っているのは部屋ではなく、理想の人生の写真だ。だが写真の中に、35年分の請求書は写らない。」

■ 解決策:夢を見たまま賢くなる3ステップ
「……なんか、急に怖くなってきました」
「怖がらせたいんじゃない。『夢』と『契約』の間に、計算を挟めという話だ」
✅ ステップ① 「買う」の総額を計算する——物件価格に3〜5割足して考える
ざっくりした概算として、生涯コストで考える癖をつける。
・物件価格+諸費用+利息+固定資産税+管理・修繕費を35年分足すと、物件価格の1.3〜1.5倍程度になるケースが多い
・4,980万円の物件なら、生涯コストは6,500万円〜7,000万円超の規模感になりうる
・この総額を見た上でまだ「欲しい」なら、それは本物の検討に値する
✅ ステップ② 借りられる額ではなく「返せる額」から逆算する
銀行や営業が提示する「借りられる額」は、上限であって適正額ではない。
・目安の一つとして、住宅費(返済+維持費)は手取り月収の25%以内に収めると、生活に余裕を残しやすい
・ボーナス払いはあてにしない(ボーナスは変動する)
・頭金ゼロのフルローンは、金利負担が増え、売却時に「ローン残高>物件価値」となるリスクも高まる。頭金や諸費用を準備してから検討した方が、リスクを抑えやすい
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✅ ステップ③ 「いつか買う」を目標に変換する——今は焦らなくていい
・社会人1年目・交際数ヶ月の今は、住む場所も家族の形もまだ動く時期。今決めないことが合理的な段階だ
・「賃貸は捨て金」論に焦らされない。賃貸は「身軽さ」と「変化への対応力」を買っている。それは若い時期にこそ価値がある
・買いたい気持ちが本物なら、「5年後に頭金○百万円」のような貯蓄目標に変換する。夢は捨てなくていい。予定に変えるだけだ

🐱 ルリのまとめ
「『家賃並み』って言葉には、『※ただし家賃以外を除く』って小さい字がついてるんだよ」
- 「家賃並みの返済」に維持費は入っていない——買う総額は物件価格の1.3〜1.5倍で考える
- 「借りられる額」は適正額ではない——住宅費は手取りの25%以内、頭金を貯めてから
- 「今が買い時」は営業の季節の挨拶——買い時は市場ではなく、自分の人生の側で決まる
■ よくある質問
Q. 借りられる上限まで借りても大丈夫ですか
「借りられる額」は金融機関の審査基準であり、「無理なく返せる額」とは別です。教育費や修繕費など将来の支出も含めて判断します。
Q. 物件価格のほかに何がかかりますか
登記費用・仲介手数料・火災保険・固定資産税・修繕積立金などがかかります。購入後も継続的に発生する費用がある点が重要です。
Q. 変動金利と固定金利のどちらがいいですか
どちらが有利かは将来の金利次第で断定できません。金利が上がった場合に返済を続けられるかで判断する考え方があります。
■ コーキの締め
ヒロはパンフレットを閉じて、ふうっと息を吐いた。
「……危なかったです。僕、来週アンケートの続きって呼ばれてました」
「行ってもいいぞ。今日の計算を持って」
「あ、それはちょっと楽しいかもしれません。営業さんに逆に質問するリスト、作ろうかな」
「お前のその癖は、そういうときに使うのが正解だ」
帰り際、ヒロは少し照れくさそうに言った。
「実は……モデルルームで、サクラさんと住む未来を、ちょっと想像しちゃったんです。それで舞い上がったんだと思います」
「知ってた」
「えぇ!?」
「探偵だからな」
(夢を見るのは悪いことじゃない。夢に値札がついてることを知っていれば、な)

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