Amazonのアソシエイトとして、コーキの社会人前夜相談室は適格販売により収入を得ています。
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※物語パートに登場する人物・団体・会社名は創作上のものです。実在の人物・団体とは関係ありません。
結婚を考え始めたとき、相手への漠然とした不安を言葉にしないままにしておくと、大事な話し合いの機会を逃してしまうことがあります。
📝 この記事でわかること
- 相性診断だけでは確認できないこと
- お金の情報をどこまで共有するか
- 意見が食い違ったときの解決実績の見方
■ オープニング
年が明けて、一月の半ば。新年の挨拶に来たサクラとヒロは、いつもより少しあらたまった様子でソファに並んだ。
「実は、年末年始に、お互いの実家に挨拶に行ったんです」と、サクラ。
「早いな。付き合って2ヶ月ちょっとだろ」
「僕たちも、そのつもりはなかったんですけど」とヒロが続ける。「帰省の時期が重なって、『じゃあついでに』って軽い気持ちで。そしたら、双方の親が完全に『結婚の挨拶』だと受け取ってしまって」
「うちの母なんて、もう式場の話をしてます」とサクラ。
「なるほど。で、二人は困ってる、と」
二人は顔を見合わせた。答えたのはサクラだった。
「それが……困ってないんです。『まだ早いです』って親には言ったんですけど、帰り道に二人で話して、『……でも、いつかそうなるなら、この人とだろうな』って、お互い思ってたことがわかって」
「のろけか。新年早々」
「違うんです!」と、今度はヒロが身を乗り出した。「だからこそ、確認したいんです。勢いじゃなくて、ちゃんと考えた上で『大丈夫』って言えるのか。……結婚って、人生で最も大きな決断の一つじゃないですか」

■ 問題提示
「一応、調べたんですけど」
ヒロの定番の台詞と共に出てきたのは、今回は3枚のメモだった。100項目の男にしては、ずいぶん進歩した。
「家庭裁判所に申し立てられた婚姻関係事件の、申立ての動機に関する統計や相談例を見ると、性格の不一致、生活費や浪費などのお金の問題、親族との関係などがよく出てきます。……つまり、好きかどうかと、結婚生活がうまくいくかは、別の問題として存在する」
「僕たちは、お互いのことが好きです。それは確認済みです」と、ヒロは真顔で言った。隣でサクラが赤くなった。
「でも『結婚しても大丈夫か』は、まだ確認してない。何をどう確認すればいいのかもわからない。……コーキさん、探偵として、調べるべき項目を教えてください」
「探偵としてか。相手の素行調査でもするか?」
「「それは違います」」
声が揃った。まあ、わかってて言ったんだが。

※統計は裁判所「婚姻関係事件数-申立ての動機別」(司法統計)を参考にしています。離婚全体の原因ではなく、家庭裁判所に申し立てられた事件の申立て動機です。
■ コーキの分析:「大丈夫か」の確認がズレる3つの理由
「よし。じゃあ真面目にやろう。まず、多くのカップルがこの確認をどう間違えるかから話す」
⚠️ 理由① 「相性の確認」と「情報の共有」を混同している
「価値観が合うか」は感覚の話だが、結婚は生活・法律・お金に大きな影響を与える制度でもある。結婚を具体的に考える段階で必要なのは、相性診断だけでなく、生活に関わる情報を話し合うことだ。
収入・貯蓄・借金・滞納の有無など、共同生活に影響する情報について、二人で合意した範囲を少しずつ共有していく。健康上の事情についても、本人のプライバシーに配慮しながら、共同生活に必要な範囲を話し合う。「聞いたら悪いかな」で曖昧にしたまま結婚し、後から発覚して関係がこじれる例もある。
⚠️ 理由② 「今の相手」だけを見て、「変化した後の二人」を見ていない
結婚生活で本当に問われるのは、今の相性ではなく変化への対応力だ。
転勤、転職、収入減、病気、子どもの有無、親の介護——数十年の間に、前提は必ず何度も変わる。だから確認すべきは「今、意見が一致しているか」よりも、「意見が食い違ったとき、この人と話し合いで解決できたか」という実績のほうだ。
⚠️ 理由③ 「不安ゼロ」を合格ラインにしている
ヒロのような慎重派が特に陥りやすいのがこれだ。どれだけ確認しても、不安はゼロにならない。不安が残る=ダメ、ではない。
結婚に限らず、人生の大きな決断は「不安が消えたからする」ものではなく、「不安を一緒に抱えていける相手だと判断したからする」ものだ。合格ラインの置き場所を間違えると、永遠に決められなくなる。

■ ケイイチロウの一言
ケイイチロウが、老眼鏡を外して、めずらしく長めに話した。
「私が結婚を決めたとき、確信があったわけではない。あったのは『この人となら、間違えたときに一緒に道を直せる』という、小さな経験の積み重ねだけだ。」
それから、少しだけ遠くを見て付け加えた。
「十数年経った今も、確信はない。あるのは、積み重ねの続きだけだ。——結婚とは、そういうものらしい」
サクラとヒロは、顔を見合わせた。なぜか二人とも、少し泣きそうな顔で笑っていた。

■ 解決策:結婚前に本当に確認すべき3つのこと
「話を戻すぞ。確認は3つでいい。ただし、どれも軽くない」
✅ その① お金の開示——合意した範囲で「数字」を見せ合う
・収入(額面と手取り)・貯蓄・借金(奨学金・ローン・リボ残高)・毎月の固定費を、合意した範囲で数字としてお互いに開示する
・言いにくいもの(借金・過去の滞納など)ほど、結婚前に出す。後から出ると、金額の問題ではなく信頼の問題になる
・その上で、結婚後のお金の管理方式(共通口座型・分担型など)の方向性だけ話しておく
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✅ その② 「もめた実績」の棚卸し——ケンカの履歴は財産
・付き合ってから今まで、意見が食い違った場面を思い出す。そのとき二人はどう解決したか
・我慢で終わらせたのか、話し合えたのか。サクラの「我慢癖」とヒロの「正論で詰める癖」は、ここで一番出やすい——自覚があるなら、それ自体を相手に共有しておく
・まだ大きな衝突がないなら、焦らなくていい。衝突を経験してから決めるのも、立派な確認プロセスだ
✅ その③ 人生の前提条件のすり合わせ——「ゆずれないもの」を3つずつ
・子どもについての希望、仕事の続け方(転勤・転職・独立の可能性)、親との距離感(同居・介護の考え)——正解のない話ほど、先に話す
・お互い「これだけはゆずれない」を3つずつ書き出して見せ合うと、衝突予定地が事前にわかる
・お金の将来設計(結婚式・住居・教育費)は、二人だけで抱えず、FP(ファイナンシャルプランナー)などの第三者を入れると、感情と数字を分けて話せる

🐱 ルリのまとめ
「『不安がない相手』を探すんじゃなくて、『不安を見せられる相手』かどうか、なんだよね」
- 確認とは相性診断だけでなく、生活に関わる情報を話し合うこと——お金は、合意した範囲で数字を共有する
- 見るべきは「もめたとき、話し合えた実績」——今の一致率より、変化への対応力
- 不安ゼロは合格ラインじゃない——「不安を一緒に抱えていける相手か」で判断する
■ よくある質問
Q. 結婚前に何を確認すべきですか
収入・貯蓄・借入などのお金の情報、意見が食い違ったときの解決の仕方、子どもや働き方といった人生の前提条件です。
Q. お金の話はどこまで共有すべきですか
二人が合意した範囲で構いません。ただし借入や滞納は、後から判明すると金額以上に信頼の問題になりやすい点に注意が必要です。
Q. 不安が残ったまま結婚してもいいのですか
不安がゼロになることは多くありません。「不安を一緒に抱えていける相手か」という視点で判断する考え方があります。
■ コーキの締め
帰り際、ヒロが振り返った。
「あの、今日の3つ、さっそく週末にやってみます。……それで、その結果もまた報告に来ていいですか」
「探偵事務所を何だと思ってる」
「「相談室です」」
また声が揃った。……まあ、否定はできない。看板にそう書いてあるようなものだからな。
二人が帰ったあと、ケイイチロウが言った。
「あの二人、報告に来るたびに顔つきが変わるな」
「ええ。最初に来たとき、サクラは『大丈夫です』しか言えなくて、ヒロは100項目のリストを持ってました」
「それが今や、二人で『大丈夫かどうかを確かめる方法』を聞きに来る。……成長というのは、ああいう形をしているんだろうな」
窓の外は、一月の澄んだ夜空だった。

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『結婚までに、やっておくべきお金のこと』中村芳子 著
結婚を考えるカップルが、収入・貯蓄・保険・将来設計について何をいつ話し合うべきかを解説した一冊。
※相手から暴力、威圧、監視、金銭管理の強要などを受けている場合は、二人だけでの話し合いを優先せず、安全を確保したうえで第三者や相談窓口を利用してください。
相談窓口:内閣府「DV相談ナビ」

