役職定年とは|いつ・いくら下がるかを知る3ステップ【第49話】

役職定年を通知され、就業規則のコピーを手に立ち尽くす54歳の部長ミツル 就活・労働

Amazonのアソシエイトとして、コーキの社会人前夜相談室は適格販売により収入を得ています。

※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
※役職定年・再雇用の制度内容は企業により大きく異なります。本記事は一般的な傾向の紹介であり、個別の条件は勤務先の就業規則等でご確認ください。

役職定年は法律で決まった制度ではなく、会社ごとの社内制度なので、何歳で・いくら下がるかは自分の会社の就業規則と賃金規程を読まないとわかりません。

📝 この記事でわかること

  • 役職定年が「会社ごとの制度」である理由
  • 就業規則・賃金規程で確かめるべきこと
  • 下がる時期と金額を家計に当てはめる方法
  • 役職を外れた後の働き方を今から考えておく理由

※物語パートに登場する人物・団体・会社名は創作上のものです。実在の人物・団体とは関係ありません。


■ オープニング

事務所の応接で、調査報告を受けるクニワタ運輸の部長ミツルとファイルを開くコーキ

※この話から、時間が一年あまり巻き戻る。サクラとヒロが、まだ別々に事務所を訪れていた頃から、また少しずつ、あの日――二人が婚姻届を出した日まで、追いかけていく。

七月の午後。事務所のドアを開けたのは、きちんとしたスーツの男だった。

背が高い。だが、姿勢のどこかに、長く椅子に座り続けてきた人の丸みがある。

「先日はどうも。……調査の件、結果を伺いに来ました」

クニワタ運輸の部長、ミツルさん。二週間前、ケイイチロウ宛てに正式な依頼を持ち込んだ人だ。事務所に届いた依頼書には、こう書かれていた。

『社内における備品・部品の持ち出しに関する事実確認』


■ 問題提示

夜の整備工場で、壊れた部品を、自費で買った補修部材を使って黙々と直すベテラン整備士

俺は調査ファイルを開いた。

「結論から言います。持ち出していたのは、整備課のベテランの方でした」

ミツルさんの表情が、わずかに硬くなる。

「……やはり、そうでしたか」

「ただし、私物化ではありません。持ち出した部品は全部、現場に戻ってきていました」

「え」

「壊れた部品を持ち帰って、自費で買った新しい補修部材を使って修理していたんです。修理費の決裁が下りないので、直した部品を、翌日には黙って現場へ戻していた。……三年間、ずっと」

ミツルさんは、しばらく何も言わなかった。

「私が、決裁を止めていました」

「止めた、というより」

「……上に上げても、通らなかった。だから止めるしかなかった。あの人は、それを知っていたんでしょうね」


■ コーキの分析:この会社で起きていた3つのこと

ホワイトボードで決裁の階段を図解し、3つの理由を説明するコーキと聞き入るミツル

コーキは調査ファイルを閉じた。

「善意でも、無断の持ち出しや修理が許されるわけではありません。それでも、個人を処分して終わらせたら、同じことは繰り返されます。問題の根は、必要な修理費が通らない仕組みにあります。理由は3つあります」

⚠️ 理由① 現場の判断が、決裁の階段を上るうちに消えていた

整備課の申請は、ミツルさんの手前までは正しく届いていた。だが、そこから上には通らなかった。現場で「必要だ」と判断されたことが、階段を上がるうちに「今期は難しい」に変わっていく。

これは誰かの怠慢ではなく、決裁の設計そのものの問題だ。判断する人と、現場を見ている人が、離れすぎている。

⚠️ 理由② 「自腹で埋める人」がいると、問題が見えなくなる

ベテランの整備士が自費で埋めていた三年間、会社の帳簿の上では何も問題は起きていなかった。個人の善意が、制度の欠陥を隠してしまう。

そして、その人がいなくなった瞬間に、隠れていた問題が一気に噴き出す。今回の「持ち出し疑惑」は、その人が体調を崩して休んだことがきっかけで発覚した。

⚠️ 理由③ 板挟みの立場そのものが、制度の問題になっている

ミツルさんは部長だ。だが、修理費一件の決裁権がない。責任はあるが権限がないという状態に、長く置かれている。

「上と相談してみる」という言葉が口癖になっている人は、無責任なのではない。本当に、相談するしか手がない立場に置かれていることが多い。


■ ケイイチロウの一言

「失ったのは決裁権ではなく決める機会」とミツルに語りかけるケイイチロウ

奥から出てきたケイイチロウが、ミツルさんの前に立った。同世代の顔をしていた。

「責任と権限が釣り合わない場所に長くいると、人は自分の判断を疑うようになります。あなたが失ったのは決裁権ではなく、決める機会の方かもしれません。」

ミツルさんは、初めて顔を上げた。


■ 解決策:報告のあと、話は別の方向へ進んだ

調査報告が終わり、俺がコーヒーを淹れ直したとき、ミツルさんがぽつりと言った。

「……実は、来年、役職定年なんです」

「役職定年、というと」

「五十五歳で、部長職を外れる。うちはそういう制度で。給料も、下がります」

聞けば、その制度のことをきちんと調べたことは一度もないという。「そういうものだ」と受け止めていただけで。

「それは、調べた方がいい」

✅ ステップ① 自分の会社の制度を、就業規則で正確に確認する

・役職定年は法律で定められた制度ではなく、企業が任意で導入している社内制度だ。あるかないか、何歳からか、給与がどうなるかは会社ごとに違う
・人事院の調査(令和5年)では、部長級・課長級に役職定年制がある企業のうち、役職定年を55歳とする企業が部長級で33.5%、課長級で40.3%と、どちらも最も多い。少し古い調査(平成19年)では、課長級に役職定年制がある企業のうち82.5%が、役職定年後に年収が下がるとしている。下がる企業のうち、役職定年前の約75〜99%になる企業が78.2%と最も多かった。幅は企業によって大きく異なる
・「そういうもの」で済ませず、就業規則と賃金規程を自分の目で読む。人事に聞いてもいい。聞くことは、恥ずかしいことではない

📚 この話に関連する一冊:『定年前、しなくていい5つのこと「定年の常識」にダマされるな!』 Amazonで見る →楽天で見る →(広告)

✅ ステップ② 「いつ・いくら下がるか」を数字にして、家計に当てはめる

・役職定年、定年、再雇用——収入が変わる時点が複数あるなら、それぞれの時期と金額を一枚の紙に書き出す
・住宅ローンの残り、子どもの学費の残り、その時期に何が重なるかを並べてみる
・「下がる」という言葉のままでは対策が立てられない。金額と時期が決まって初めて、埋める方法を考えられる

✅ ステップ③ 役職を外れた後の「役割」を、今のうちから考えておく

・役職定年で失うのは給与だけではない。肩書きと、決裁の場と、呼ばれ方が同時に変わる
・役職定年そのものは、退職を意味する制度ではない。また、定年を65歳未満に定める企業には、希望者について65歳までの雇用を確保する措置(定年の引上げ・継続雇用制度の導入・定年の廃止のいずれか)が求められている。ただし同じ役職・職務・賃金が続くことまで保証するものではない
・制度が変わる前に、自分がどう働きたいかを言葉にしておく。会社が決めてくれるのを待つと、決められた条件を受け取るだけになる

ミツルのきちんと磨かれた革靴の匂いを嗅ぐルリ

🐱 ルリのまとめ

「決裁が通らないのは、その人が弱いからじゃなくて、通らない仕組みになってるからなんだよね」

  • 現場の判断は決裁の階段を上るうちに消える——個人を責めて終わらせず、通らない仕組みのほうを見直す問題
  • 個人の善意が制度の欠陥を隠す——自腹で埋める人がいると問題が見えなくなる
  • 役職定年は法律ではなく社内制度——「そういうもの」で済ませず就業規則を読む

■ よくある質問

Q. 役職定年は法律で決まっていますか

いいえ。役職定年は法律で定められた制度ではなく、企業が任意で導入している社内制度です。あるかないか、何歳からか、給与がどう変わるかは会社ごとに違います。

Q. 役職定年で給料はどれくらい下がりますか

下がる時期や幅は企業によって大きく異なります。一般的な傾向よりも、自分の会社の就業規則・賃金規程で確認した数字を使って考えることが大切です。

Q. 役職定年の前にやっておくことはありますか

収入が変わる時点と金額を一枚に書き出し、住宅ローンや教育費の残りと並べてみることです。あわせて、役職を外れた後にどう働きたいかを言葉にしておくと、会社が示す条件をただ受け取るだけになりにくくなります。

Q. 役職定年の後も、65歳まで働き続けられますか

役職定年そのものは、退職を意味する制度ではありません。また、定年を65歳未満に定める企業には、希望者について65歳までの雇用を確保する措置(定年の引上げ・継続雇用制度の導入・定年の廃止のいずれか)が求められています。ただし、同じ役職・職務・賃金が続くことまで保証するものではないため、勤務先の制度を確かめておく必要があります。

📎 一次情報(公的機関)


■ コーキの締め

事務所のドアの前で振り返り、また来ますと言いたげなミツルと見送るコーキ

ミツルさんは、調査報告書を丁寧にカバンにしまった。

「整備の彼には、私から話します。……三年も気づかなかったのは、こちらの落ち度なので」

「決裁の件は」

「もう一度、上げてみます。今度は、この報告書に修理履歴や過去の申請記録も添えます。現場で何が起きていたのか、数字で示します」

そう言って、少しだけ笑った。感情を見せない訓練をされた顔が、ほんの一瞬だけ緩んだように見えた。

帰り際、ドアの前で振り返る。

「あの、こういう……仕事の話じゃない相談も、していいんですか」

「看板には相談室とは書いてませんが」

「はい」

「まあ、来る人はだいたい相談していきます」

ドアが閉まったあと、ケイイチロウが言った。

「あの人、また来るぞ」

(今月に入って、新しい依頼人が続いている。給与明細を握りしめてきた女性と、就活の資料を抱えてきた男。そして今日、五十四歳の部長。……年齢も悩みもばらばらだが、みんな「知らないまま来てしまった」という顔をしている)


※以下はアフィリエイトリンクです。

📚 役職定年について調べておきたい方へ

『定年前、しなくていい5つのこと「定年の常識」にダマされるな!』大江英樹 著
役職定年・再雇用を含む「定年後」にまつわる思い込みを、元証券アナリストが整理する一冊。

Amazonで見る →楽天で見る →