【第22話】コーキ探偵、「仕事のお金が払われなかった問題」の相談を受ける

第22話アイキャッチ:報酬未払いに悩むケンタと請求書 フリーランス

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※物語パートに登場する人物・団体・会社名は創作上のものです。実在の人物・団体とは関係ありません。

■ オープニング

九月の初め。国民健康保険の一件から少し経って、ケンタがまた事務所にやってきた。

今日は、アイスコーヒーを持っていなかった。それくらい、頭がいっぱいだという顔をしていた。

「コーキさん、今度はお金が……入ってこないんです」

「使いすぎか」

「いや、逆です。やった仕事の報酬が、振り込まれないんです」

ケンタはスマホを取り出して、メッセージ画面を見せた。

「納品してもう2ヶ月。何度連絡しても、『確認します』しか返ってこなくて」

スマホだけ握りしめて思いつめた顔のケンタ

■ 問題提示

「動画編集の仕事です。知り合いの紹介で受けて、ちゃんと納品もしました。先方も『いいですね』って言ってくれたんです」

「契約書は」

「……ないです。メッセージのやりとりだけで。『今回はスピード優先で』って言われて、金額もチャットで決めただけで」

「請求書は出したのか」

「出しました。でも『経理に回しておきます』のあと、ずっと音沙汰なくて。最近は既読もつかなくなって」

ケンタは肩を落とした。

「金額は20万円なんですけど、もう諦めたほうがいいのかなって。揉めるのも面倒だし」

「いくら働いた」

「……1ヶ月くらい、その案件にかかりっきりでした」

ケンタは小さくため息をついた。

「1ヶ月分の仕事が、タダになるってことですよね。これ」

「確認します」で止まったチャット画面を見せるケンタ

■ コーキの分析:報酬が「払われない」3つの理由

「諦めるな。まだやれることがある」

コーキはメモ帳を開いた。

⚠️ 理由① 「契約書がない」ことが足元を見られる原因になる

口約束やチャットだけで仕事を進めると、後から「言った・言わない」の水掛け論になりやすい。

ただし、契約書という形式の書類がなくても、チャットのやりとり・見積もり・請求書・納品物などが残っていれば、それらは「合意があった証拠」になりうる。「契約書がないから泣き寝入り」と考えるのは早い

むしろ、2024年11月1日に施行された「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」では、発注者が同法の対象となる事業者である場合、フリーランスに業務を委託する際には、取引条件を書面やメールなどで明示することが求められる。条件が曖昧なまま進められた取引は、発注者側にも問題があるケースがある。

⚠️ 理由② 「いつか払う」を信じて待ち続けてしまう

「確認します」「経理に回します」という言葉を信じて待っているうちに、時間だけが過ぎていく。

支払いが遅れるほど、相手側で後回しにされ、回収のタイミングを逃すことにもつながる。待ち続けることは、必ずしも誠実さにつながるとは限らない。

フリーランス新法では、報酬の支払期日は、原則として給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内で定め、その期日までに支払うことが求められている。期日を大きく過ぎているなら、それは正当な「待ち」ではない可能性がある。なお、取引の種類や納品・検収の扱いによって確認すべき点があるため、具体的なケースでは相談窓口で確認したい。

⚠️ 理由③ 「揉めたくない」気持ちが泣き寝入りを生む

「揉めるのが面倒」「今後の関係に響くかも」という気持ちは、多くのフリーランスが抱える。

しかし、正当な報酬を請求することは「揉めごと」ではなく、当然の権利の行使だ。きちんと仕事をして納品した以上、その対価を求めることに後ろめたさを感じる必要はない。むしろ、不払いを放置する取引先と無理に関係を続けるほうが、長期的にはリスクになる。

コーキが報酬未払いの対処を分析・説明する

■ ケイイチロウの一言

ケイイチロウがコーヒーを置いて、静かに言った。

「働いた対価を求めることは、争いではない。約束を守らせることだ。」

ケンタは、その言葉をスマホのメモに打ち込んだ。

ケイイチロウがひとこと告げる

■ 解決策:未払い報酬を請求するための3ステップ

泣き寝入りする前に、段階を踏んでできることがある。

✅ ステップ① まず「証拠」を整理する

請求を進める前に、手元にある記録を整理しておく

・仕事の依頼内容がわかるチャット・メールのやりとり
・金額・納期を合意した記録
・提出した見積書・請求書
・納品した成果物と、納品した日時がわかるもの
・相手の「確認します」などの返信履歴

これらは、相手に支払いを求める際にも、後述の相談・法的手続きの際にも役立つ。スクリーンショットなどで保存しておく。

✅ ステップ② 段階的に、記録が残る形で請求する

感情的にならず、順を追って請求する。各段階で「記録が残る形」にしておくのがポイントだ

1. リマインド:「請求書の件、ご確認いただけましたか」と、メールなど文章で改めて連絡する
2. 支払期日の明示:「◯月◯日までにお支払いをお願いします」と期限を区切って伝える
3. 内容証明郵便:それでも支払われない場合、「いつ・誰が・どんな内容を送ったか」を郵便局が証明してくれる内容証明郵便で、請求した事実と内容を記録に残す方法がある

口頭やチャットだけでなく、書面で残すことで、相手の対応が変わることも多い。

✅ ステップ③ 公的な窓口・法的手段を知っておく

自分だけで解決が難しい場合、頼れる窓口や手段がある

フリーランス・トラブル110番:フリーランスの取引トラブルについて、弁護士に無料で相談できる国の窓口
少額訴訟・支払督促:比較的簡易な裁判所の手続きとして「少額訴訟」や「支払督促」がある。少額訴訟は60万円以下の金銭請求について原則1回の審理で解決を目指す手続き、支払督促は書類審査で支払いを求める手続きだ。いずれも相手が異議を出すと通常の訴訟に移ることがある

金額や状況によって適切な方法は異なるため、まずは下記の相談窓口に相談したうえで、進め方を決めるのがよい。

困ったときの相談先:
フリーランス・トラブル110番(フリーランスの取引トラブル・弁護士に無料相談)
公正取引委員会 フリーランス法特設サイト(フリーランス新法の内容)
法テラス(法的トラブルの総合案内)
少額訴訟|裁判所(少額訴訟の手続き案内)
支払督促|裁判所(支払督促の手続き案内)

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ルリがスマホをにらむケンタを見下ろす

🐱 ルリのまとめ

「タダ働きにしないために、仕事の約束は記録に残すべし」

  • 契約書がなくても、チャット・請求書・納品記録があれば「合意の証拠」になりうる——泣き寝入りを決めるのは早い
  • 「確認します」を信じて待ち続けず、記録が残る形で段階的に請求する——リマインド→期日明示→内容証明
  • 一人で抱えず、フリーランス・トラブル110番など公的窓口に相談できる——フリーランス新法の対象になる取引なら、取引条件の明示や支払期日のルールも確認材料になる

■ コーキの締め

ケンタがスマホをしまいながら言った。

「俺、ずっと『揉めたくないから』って、いろんなこと飲み込んできたんですよ」

「知ってる」

「でも、ちゃんと働いた分なんですよね。これ」

「そうだ」

ケンタは少し背筋を伸ばした。

「……請求します。ちゃんと、記録に残る形で」

第1話で10万円を溶かし、国保で卒倒していた男が、今は「正当な対価を求める」という言葉を、自分の意志で口にしていた。

(「まあいっか」のケンタが、「ちゃんと求める」ことを覚えた)

「請求します」と決意するケンタ

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