フリーランスの報酬が未払いのとき|督促の順番・内容証明・無料相談窓口【第22話】

第22話アイキャッチ:報酬未払いに悩むケンタと請求書 フリーランス

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※本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

報酬が支払われないときは、①証拠を集める、②メールで支払い状況を確認し、期日を区切って督促する、③無料の相談窓口に相談し、必要なら内容証明郵便を送る、④支払督促や少額訴訟を検討する、の順に進めます。契約書がなくても、チャットのやり取りや請求書、納品の記録が請求の材料になります。発注者がフリーランス法の対象なら、報酬の支払期日は給付を受け取った日から60日以内で定めることが求められています。

📝 この記事でわかること

  • 報酬の未払いが起きやすい理由と、契約書がないときの証拠
  • 督促から相談・法的手続きまでの順番
  • フリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)で発注者に求められること
  • 無料で使える相談窓口と、それぞれに相談できること
  • 支払督促・少額訴訟の違いと費用の目安

※物語パートに登場する人物・団体・会社名は創作上のものです。実在の人物・団体とは関係ありません。


  1. ■ 結論:未払いは「証拠 → 督促 → 相談 → 裁判所の手続き」の順で進める
  2. ■ 事例|納品して2か月、20万円が振り込まれない
  3. ■ なぜ報酬の未払いが起きるのか|3つの理由
  4. ■ ケイイチロウの一言
  5. ■ まず集める証拠|契約書がなくても請求の材料になるもの
  6. ■ 督促の順番|メール2段階のあと、内容証明と相談へ
    1. 督促の文面で避けたいこと
    2. 内容証明郵便は「送った事実と内容」を残す手段
  7. ■ フリーランス法で確認すること|発注者に求められる「条件の明示」と「60日以内の支払期日」
    1. 自分の取引が対象かは、自分と発注者の2つで決まる
    2. 発注者に求められること
    3. 違反の疑いがあるときの申出先と、できること・できないこと
    4. 取適法(旧・下請法)との関係
  8. ■ 無料で使える相談窓口|どこに何を相談するか
  9. ■ 支払督促と少額訴訟|自分でできる裁判所の手続き
  10. ■ 次から未払いを防ぐ|仕事を受ける前に決めておくこと
  11. ■ よくある質問
    1. Q. 契約書がなくても報酬を請求できますか
    2. Q. 請求はどの順番で進めればいいですか
    3. Q. 支払期日を決めていなかった場合はどうなりますか
    4. Q. 内容証明郵便は送らないといけませんか
    5. Q. 支払督促と少額訴訟は、どちらを選べばいいですか
    6. Q. 遅延損害金は請求できますか
    7. Q. 未払いの報酬は、いつまで請求できますか
    8. Q. 相手と連絡が取れなくなりました
    9. Q. 会社員の残業代の未払いとは違いますか
  12. ■ コーキの締め

■ 結論:未払いは「証拠 → 督促 → 相談 → 裁判所の手続き」の順で進める

報酬が振り込まれないとき、いきなり法的手段に進む必要はない。証拠をそろえ、記録が残る形で段階を上げていく。

順番目安のタイミングやること詳しくは
① 証拠を集める今日発注内容・金額・納品日・請求書・やり取りを、日付がわかる形で保存する証拠のチェックリスト
② 支払い状況を確認する支払期限の翌営業日〜3日責めずに、メールで入金の状況を確認する督促の順番/サイド記事②の文例
③ 期日を区切って督促する②から約1週間支払いの期日を明記し、次にどうするかを伝える督促の順番/サイド記事②の文例
④ 相談する・内容証明を送る③の期日を過ぎたら無料の相談窓口に相談し、必要なら内容証明郵便で請求する相談窓口
⑤ 裁判所の手続きを検討する相談したうえで支払督促か少額訴訟を選ぶ支払督促と少額訴訟

※②③のタイミングは、サイド記事②(督促メール3段階テンプレ)と同じ目安です。

あなたはどれ?

なぜ報酬の未払いは起きるのか。納品して2か月、何度連絡しても「確認します」しか返ってこない、という相談から見ていく。


■ 事例|納品して2か月、20万円が振り込まれない

九月の初め。ケンタが事務所にやってきた。

今日は、アイスコーヒーを持っていなかった。それくらい、頭がいっぱいだという顔をしていた。

「コーキさん、今度はお金が……入ってこないんです」

「使いすぎか」

「いや、逆です。やった仕事の報酬が、振り込まれないんです」

ケンタはスマホを取り出して、メッセージ画面を見せた。

「納品してもう2ヶ月。何度連絡しても、『確認します』しか返ってこなくて」

スマホだけ握りしめて思いつめた顔のケンタ

「動画編集の仕事です。知り合いの紹介で受けて、ちゃんと納品もしました。先方も『いいですね』って言ってくれたんです」

「契約書は」

「……ないです。メッセージのやりとりだけで。『今回はスピード優先で』って言われて、金額もチャットで決めただけで」

「請求書は出したのか」

「出しました。でも『経理に回しておきます』のあと、ずっと音沙汰なくて。最近は既読もつかなくなって」

「金額は20万円なんですけど、もう諦めたほうがいいのかなって。揉めるのも面倒だし」

「いくら働いた」

「……1ヶ月くらい、その案件にかかりっきりでした。1ヶ月分の仕事が、タダになるってことですよね。これ」

「確認します」で止まったチャット画面を見せるケンタ

■ なぜ報酬の未払いが起きるのか|3つの理由

「諦めるな。まだやれることがある」

コーキはメモ帳を開いた。

⚠️ 理由① 取引の条件が、書面に残っていない

口約束やチャットだけで仕事を進めると、後から「言った・言わない」の水掛け論になりやすい。

ただし、契約書という形式の書類がなくても、チャットのやり取り・見積書・請求書・納品物などが残っていれば、それらは「合意があった証拠」になりうる。「契約書がないから泣き寝入り」と考えるのは早い。

2024年11月1日に施行されたフリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)では、事業者がフリーランスに業務を委託するときは、報酬の額や支払期日などの取引条件を、書面やメールなどで直ちに明示しなければならない。この明示の義務は、発注者に従業員がいるかどうかに関係なくかかる。条件が曖昧なまま進められた取引は、発注者側にも問題があることがある。

⚠️ 理由② 「確認します」を信じて、待ち続けてしまう

「確認します」「経理に回します」という言葉を信じて待っているうちに、時間だけが過ぎていく。支払いが遅れるほど相手の中で後回しにされ、回収のタイミングを逃しやすくなる。

発注者が従業員を使っている事業者などの場合、フリーランス法では、報酬の支払期日を、納品物などを受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内で定めることが求められる。期日を大きく過ぎているなら、それは正当な「待ち」ではない可能性がある。どの取引が対象になるかは、下のフリーランス法の確認で整理する。

⚠️ 理由③ 「揉めたくない」気持ちが、泣き寝入りを生む

「揉めるのが面倒」「今後の関係に響くかも」という気持ちは、多くのフリーランスが抱える。

しかし、正当な報酬を請求することは「揉めごと」ではなく、当然の権利の行使だ。きちんと仕事をして納品した以上、その対価を求めることに後ろめたさを感じる必要はない。むしろ、不払いを放置する取引先と無理に関係を続けるほうが、長い目で見ればリスクになる。

コーキが報酬未払いの対処を分析・説明する

■ ケイイチロウの一言

ケイイチロウがコーヒーを置いて、静かに言った。

「働いた対価を求めることは、争いではない。約束を守らせることだ。」

ケンタは、その言葉をスマホのメモに打ち込んだ。

ケイイチロウがひとこと告げる

ここからは、ケンタと一緒に確認した順番を、表とチェックリストで整理する。


■ まず集める証拠|契約書がなくても請求の材料になるもの

請求を進める前に、手元にある記録を集める。督促のときにも、相談窓口や裁判所の手続きのときにも使う。

✅ 証拠のチェックリスト

□ 仕事の依頼内容がわかるメール・チャット(業務の内容、納期)
□ 金額と支払いの時期を決めたやり取り(「20万円で」「月末締め翌月末払いで」など)
□ 見積書・発注書・請求書と、それを送ったメール
□ 納品の記録(納品メール、ファイルを送った履歴、成果物のファイル名と日時)
□ 相手の反応(「いいですね」「確認します」「経理に回します」などの返信)
□ 催促した日付と内容のメモ

保存のしかたは、次の3つを押さえておく。

  • チャットはスクリーンショットだけでなく、可能ならエクスポート(書き出し)やPDF化もしておく。相手がメッセージを消したり、アカウントを消したりすることがあるため。
  • 日付と相手の名前(アカウント名)が写る形で残す。
  • 相手の正式な名前(会社名・屋号)と住所を確認しておく。内容証明郵便や裁判所の手続きでは、相手の名前と住所が必要になる。

■ 督促の順番|メール2段階のあと、内容証明と相談へ

督促は、いきなり強い言葉で始めない。1通目は相手の見落としを前提に確認し、2通目で期日を区切る。それでも動かなければ、相談窓口と内容証明郵便に進む。

段階目安のタイミング手段書くこと・ポイント
1支払期限の翌営業日〜3日メール請求書番号・金額・支払期限を示し、入金が確認できないことを伝える。責めずに、請求書を再添付する
21から約1週間メール支払いの期日を具体的な日付で示す。期日までに入金や連絡がなければ、書面での請求や公的な窓口への相談を検討すると伝える
32の期日を過ぎたら相談窓口・内容証明郵便先に相談窓口や弁護士に相談してから、内容証明郵便を出すかを決める

※段階とタイミングは、サイド記事②の「段階別の早見表」と同じです。

📎 そのまま使える督促メールの文面(1通目・2通目)と請求書のひな形は、調査ファイルにまとめています:報酬が振り込まれない…フリーランスの督促メール3段階テンプレ|内容証明と相談窓口まで

督促の文面で避けたいこと

  • 感情的な言葉や、相手の人格を責める言い方。
  • 「SNSで公表します」「取引先に言いふらします」など、相手を脅すように受け取られかねない書き方。
  • 金額や日付の書き間違い。請求書番号・金額・納品日を、請求書と一字ずつ照らし合わせる。

内容証明郵便は「送った事実と内容」を残す手段

内容証明郵便は、いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに差し出したかを、日本郵便が証明するサービスだ。差し出すと一般書留になり、配達証明を付ければ、相手に届いた事実も記録に残せる。

  • 証明されるもの:文書を差し出した事実と、その内容。文書に書いた内容が正しいかどうかを証明するものではない。
  • できないこと:相手に支払いを強制する力はない。払わせるための手続きは、下の支払督促・少額訴訟になる。
  • 料金:内容証明の料金は1枚目480円、2枚目以降は1枚ごとに290円。ほかに郵便料金と一般書留の料金、付けるなら配達証明の料金がかかる(内訳の目安はサイド記事②)。
  • 注意:字数・行数の決まりがあり、差し出せる郵便局も限られる。インターネットで出せる「e内容証明」もある。

自分の名前で出すか、弁護士に依頼して弁護士名で出すかで、相手の受け止め方は変わる。どちらにするかも、先に相談窓口で聞いておくとよい。


■ フリーランス法で確認すること|発注者に求められる「条件の明示」と「60日以内の支払期日」

2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律。この記事では「フリーランス法」と呼ぶ。いわゆるフリーランス新法)は、事業者からフリーランスへの業務委託を対象にした法律だ。

自分の取引が対象かは、自分と発注者の2つで決まる

確認すること対象になる条件
自分(受注者)個人で従業員を使っていない。または、法人で代表者1人だけ(ほかに役員がおらず、従業員も使っていない)
発注者事業者であること(会社でも個人事業主でもよい。フリーランスからフリーランスへの委託も対象)。消費者(個人のお客さん)からの依頼は対象外
取引の内容業務の委託であること(物品の製造・加工、動画やデザインなどの情報成果物の作成、役務の提供)。単なる商品の売り買いは対象外

※「従業員を使用」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇っていることをいいます。

発注者に求められること

義務誰に義務があるか中身
取引条件の明示(第3条)フリーランスに業務を委託するすべての事業者(従業員のいない個人の発注者も含む)業務の内容、報酬の額、支払期日、委託した日、納期などを、書面またはメールなどの電磁的方法で、直ちに明示する
支払期日のルール(第4条)従業員を使っている事業者、または役員が2人以上いる法人などの発注者報酬の支払期日を、納品物などを受け取った日(役務の提供は、提供を受けた日)から60日以内の、できる限り短い期間内で定め、その日までに支払う。発注者が内容を検査するかどうかは関係ない

※支払期日を定めなかった場合は、納品物などを受け取った日が支払期日とみなされます。60日を超える日を定めた場合は、受け取った日から数えて60日を経過する日が支払期日とみなされます(第4条第2項)。発注者がほかの事業者から受けた仕事を再委託した場合は、条件を満たせば、元の発注の支払期日から30日以内とする特例があります(第4条第3項)。

ケンタのように「金額はチャットで決めただけで、支払日は決めていない」取引でも、発注者が第4条の対象なら、納品を受け取った日が支払期日とみなされる。納品から2か月が過ぎているなら、すでに支払期日は過ぎていることになる。

違反の疑いがあるときの申出先と、できること・できないこと

  • 取引条件の明示や支払期日など(法律の第2章)の違反は公正取引委員会・中小企業庁、ハラスメント対策など就業環境(第3章)の違反は厚生労働省が申出先になる。厚生労働省の申出フォームからオンラインで申し出ることもできる。
  • ただし、この申出は当事者同士の話し合いの仲介や和解など、民事上の紛争を解決するための手続きではない。報酬を取り立ててもらう制度ではないので、回収は督促・相談窓口・裁判所の手続きで進める。

取適法(旧・下請法)との関係

2026年1月1日から、下請法は「中小受託取引適正化法」(取適法)に変わった。発注者が資本金1,000万円超、または従業員100人超の法人などの場合は、相手が個人のフリーランスでも取適法が適用されることがある。フリーランス法と取適法のどちらにも違反する行為には、原則としてフリーランス法が優先して適用される。どちらに当たるかを自分で判断する必要はなく、下の相談窓口で取引の内容を伝えればよい。


■ 無料で使える相談窓口|どこに何を相談するか

窓口相談できること費用・方法
フリーランス・トラブル110番(厚生労働省の委託事業・第二東京弁護士会が運営)発注事業者から仕事を受けたときのトラブル(報酬の未払い、あいまいな契約、ハラスメントなど)を弁護士に相談できる。話し合いで解決を目指す「和解あっせん」の手続きもある相談・和解あっせんとも無料。匿名でも相談できる。電話 0120-532-110(9:30〜16:30、土日祝日を除く)、メール、Web(ビデオ通話)
法テラス(日本司法支援センター)法的トラブルの解決に役立つ制度や相談窓口の案内。収入・資産が一定の基準以下などの条件を満たすと、無料の法律相談や弁護士費用の立替えを使える場合がある案内は無料。サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時、土曜9時〜17時)
フリーランス法違反の申出窓口(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)発注者のフリーランス法違反の疑いを申し出るオンラインまたは郵送。報酬の取り立てや紛争の仲介はしない

※フリーランス・トラブル110番の対象は、フリーランスが発注事業者から業務の委託を受けたときのトラブルです。フリーランス自身が発注した側のトラブル、契約書や請求書の作成、発注事業者以外との取引(部屋の賃貸借など)は対象外で、弁護士が代理人になって相手と直接交渉することもしていません。

相談に行く前に、上の証拠のチェックリストの資料と、督促のメールの控えを、日付の順に並べておく。相手の名前・住所・金額・納品日・支払期日を1枚にまとめておくと、相談が早く進む。


■ 支払督促と少額訴訟|自分でできる裁判所の手続き

督促にも相談にも相手が応じないときは、裁判所の手続きがある。報酬の未払いでよく比べられるのが、支払督促と少額訴訟だ。

支払督促少額訴訟
使える請求金銭などの支払いを求める請求60万円以下の金銭の支払いを求める請求
どこに申し立てるか相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所(金銭の請求は、支払うべき場所の簡易裁判所にも起こせる)
進み方書類の審査だけ。裁判所に行く必要はない原則1回の審理で判決。証拠は、その日にすぐ調べられるものに限られる
相手が争ったら相手は支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てることができ、異議が出ると通常の訴訟に移る相手の申立てや裁判所の判断で、通常の訴訟に移ることがある。判決への不服は異議の申立てに限られる(控訴はできない)
相手が争わなかったら仮執行宣言の申立てをし、仮執行宣言付きの支払督促にもとづいて強制執行を申し立てられる判決や和解の内容にもとづいて強制執行を申し立てられる。分割払いや支払いの猶予を認める判決になることもある
回数の制限―同じ簡易裁判所で、1人につき年10回まで
申立手数料(請求額20万円・書面で申し立てる場合)3,700円4,500円

※電子で申し立てると、手数料は少し安くなります(裁判所の「手数料額早見表」で確認できます)。

※申立手数料は、裁判所の「手数料額早見表」(2026年5月21日以後の申立て)によります。従来は別に必要だった郵便費用が申立手数料に一本化されたため、表の額は郵便費用に当たる額を含みます。納付は原則としてペイジーによる電子納付です。請求額が変わると手数料も変わるので、早見表で確認してください。

※費用を支払う余裕がない場合には、裁判所の「訴訟上の救助」や、法テラスの民事法律扶助による立替えの制度があります(条件あり)。

どちらを選ぶかの目安は次のとおり。

  • 相手が「払う気はあるが後回しにしている」ように見える → 支払督促。書類だけで進み、異議が出なければ強制執行まで進める。
  • 相手が「出来が悪い」などと争ってきそう → 支払督促は異議で通常の訴訟に移るので、はじめから少額訴訟(60万円以下の場合)を考える。少額訴訟は1回の審理で終えるため、証拠を最初にそろえておく必要がある。
  • 金額が大きい、相手の住所がわからない、相手が遠方にいる → 手続きを選ぶ前に、相談窓口や弁護士に相談する。

ケンタの20万円なら、どちらの手続きも使える。ただ、手続きを選ぶ前に、まず相談窓口で「どの順番で進めるか」を一緒に考えてもらうのが確実だ。

📚 この手順に役立つ一冊:『フリーランスの(トラブルから自分を守るために絶対に知っておきたい)法律の話』 Amazonで見る →楽天で見る →(広告)


■ 次から未払いを防ぐ|仕事を受ける前に決めておくこと

未払いの多くは、仕事を受ける前の数行のやり取りで防げる。発注者がフリーランス法の対象なら、次の多くは発注者が明示すべき事項でもある。明示がなければ、こちらから確認して、メールで残す。

✅ 仕事を受ける前の確認リスト

□ 業務の内容(何を、何本、どの形式で納品するか)
□ 報酬の額(税込か税抜か、源泉徴収の有無)
□ 支払期日(「納品月末締め・翌月末払い」のように、日付が決まる書き方で)
□ 納期と、納品の方法
□ 検収(発注者の確認)をするなら、その完了日
□ 修正の回数と範囲
□ 着手金・前払いの有無(初めての取引先や金額が大きい仕事では検討する)


棚の上のルリが、スマホをにらむケンタを、静かに見下ろしていた。

ルリがスマホをにらむケンタを見下ろす

🐱 ルリのまとめ

「タダ働きにしないために、仕事の約束は記録に残すべし」

  • 契約書がなくても、チャット・請求書・納品の記録は「合意の証拠」になりうる——まず日付のわかる形で集める
  • 督促は「確認 → 期日を区切る → 相談・内容証明 → 支払督促・少額訴訟」の順に段階を上げる——一人で抱えず、無料の相談窓口を使う
  • 発注者がフリーランス法の対象なら、取引条件の明示と60日以内の支払期日が求められる——次の仕事からは、受ける前に条件をメールで残す

■ よくある質問

Q. 契約書がなくても報酬を請求できますか

できます。メールやチャットのやり取り、見積書・請求書、納品の記録などが、取引があったことや金額の合意を示す資料になります。ただし口約束だけだと証明が難しくなるので、今あるやり取りを日付がわかる形で保存してください。

Q. 請求はどの順番で進めればいいですか

支払期限の翌営業日〜3日にメールで支払い状況を確認し、約1週間後に期日を区切って督促します。それでも支払われなければ、無料の相談窓口に相談し、必要に応じて内容証明郵便を送ります。そのあとの選択肢が、支払督促や少額訴訟です。督促メールの文面は、調査ファイル(サイド記事②)にあります。

Q. 支払期日を決めていなかった場合はどうなりますか

発注者がフリーランス法の支払期日のルール(第4条)の対象なら、納品物などを受け取った日が支払期日とみなされます。60日を超える日を決めていた場合は、受け取った日から数えて60日を経過する日が支払期日になります。発注者が対象かどうかわからないときは、フリーランス・トラブル110番で相談してください。

Q. 内容証明郵便は送らないといけませんか

必須ではありません。内容証明は、文書を送った事実と内容を残す手段で、相手に支払いを強制する力はありません。送るかどうか、自分の名前で送るか弁護士に依頼するかは、相談窓口で相談してから決めると安心です。

Q. 支払督促と少額訴訟は、どちらを選べばいいですか

相手が支払いを後回しにしているだけなら、書類審査だけで進む支払督促が向いています。相手が仕事の出来などを理由に争ってきそうなら、異議で通常の訴訟に移るため、60万円以下なら少額訴訟も考えます。どちらも相手の住所地の簡易裁判所が原則なので、相手が遠方なら先に相談してください。

Q. 遅延損害金は請求できますか

契約で遅延損害金を決めていれば、その内容が基準になります。決めていなければ民法の法定利率が基準で、2026年4月1日から2029年3月31日までは年3%です。実際に請求するかは、金額や相手との関係を見て、相談窓口で確認してください。

Q. 未払いの報酬は、いつまで請求できますか

民法では、債権は「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のどちらか早いほうで、時効により消滅します(民法第166条)。実際の期限は取引の内容で変わるので、放置せず、早めに弁護士や相談窓口に確認してください。

Q. 相手と連絡が取れなくなりました

まず、相手の正式な名前と住所を確認できる資料(請求書の宛名、発注メールの署名、会社のサイトなど)を集めてください。内容証明郵便や裁判所の手続きには、相手の名前と住所が必要です。そのうえで、フリーランス・トラブル110番などに相談してください。

Q. 会社員の残業代の未払いとは違いますか

違います。会社に雇われて働く人の残業代の未払いは、労働基準法などの労働関係の法律の問題で、確認のしかたも相談先も変わります。残業代については第20話(残業代が出ないときの確認方法)で扱っています。業務委託の契約でも、働き方の実態から労働者と判断される場合は、フリーランス法ではなく労働関係の法律が適用されます。

📌 この記事で参照した一次情報(2026年10月6日確認)

※制度・手数料・料金は改定されることがあります。手続きの前に、各機関の公式ページで最新の情報を確認してください。


■ コーキの締め

ケンタがスマホをしまいながら言った。

「俺、ずっと『揉めたくないから』って、いろんなこと飲み込んできたんですよ」

「知ってる」

「でも、ちゃんと働いた分なんですよね。これ」

「そうだ」

ケンタは少し背筋を伸ばした。

「……請求します。ちゃんと、記録に残る形で」

「まあいっか」で、いろんなことを飲み込んできた男が、今は「正当な対価を求める」という言葉を、自分の意志で口にしていた。

(「まあいっか」のケンタが、「ちゃんと求める」ことを覚えた)

「請求します」と決意するケンタ

【ご注意】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新情報と異なる場合があります。困ったときは公的窓口(フリーランス・トラブル110番・法テラス等)や弁護士にご相談ください。

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