【第23話】コーキ探偵、「職場でハラスメントされていた問題」の相談を受ける

第23話アイキャッチ:「私が悪い」と自分を責めるルリ 就活・労働

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※物語パートに登場する人物・団体・会社名は創作上のものです。実在の人物・団体とは関係ありません。

※この記事は、つらい状況にある方へ向けた情報提供です。今まさに苦しい状況にある場合は、記事末尾の相談窓口を頼ってください。

■ オープニング

九月の初め。サクラが事務所に来たとき、コーキはすぐに気づいた。

前に来たときよりも、顔色が悪い。目の下にうっすらクマがあり、いつもより口数が少ない。

「……すみません、また来ちゃって」

「いい。座れ」

サクラはソファに浅く腰かけ、しばらく黙っていた。それから、絞り出すように言った。

「あの……これって、私が悪いんですかね」

顔色の悪いサクラが事務所を訪れる

■ 問題提示

少しずつ、サクラは話し始めた。

「特定の先輩がいて。その人から、ずっと言われ続けてて」

「どんなことを」

「『こんなこともできないの』とか『君がいると仕事が遅くなる』とか。最初は私が至らないからだと思ってたんですけど、最近は、挨拶しても無視されたり、私だけ会議の連絡が来なかったり」

サクラは膝の上で手を握った。

「仕事を全部押し付けられて、できないと『やる気がない』って言われて。でも他の人には普通なんです。私にだけ、なんです」

「いつからだ」

「……3ヶ月くらい前から、だんだん」

「誰かに相談したか」

「してないです。私がもっとしっかりすれば解決するのかなって。それに、こんなことで騒いだら、めんどくさい人だと思われるし」

サクラの声が少し震えた。

「最近、朝になるとお腹が痛くて。会社に行くのが、こわくて」

ソファで少しずつ打ち明けるサクラ

■ コーキの分析:「我慢」が長引いてしまう3つの理由

コーキはメモ帳を置いて、まっすぐサクラを見た。

「まず、はっきり言っておく。それはお前が悪いんじゃない」

サクラが顔を上げた。

⚠️ 理由① 「指導」と「ハラスメント」の境界がわからなくなっている

仕事の指導と、ハラスメントは違う。

厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」という3つの要素をすべて満たすものとして説明している。

特定の人だけを狙った人格否定、無視や仲間外し、明らかに過大な仕事の押し付けなどは、業務上必要な「指導」の範囲を超えている可能性がある。「自分が至らないから」と思い込まされてしまうと、この境界が見えなくなる。

⚠️ 理由② 「自分が悪い」と思い込まされる構造がある

繰り返し否定的な言葉を浴びせられると、人は少しずつ「自分に原因がある」と感じるようになる。

特に、真面目で責任感の強い人ほど「私がもっとちゃんとすれば」と自分を追い込みやすい。だが、特定の人だけに繰り返し向けられる言動は、本人の能力の問題ではなく、その関係性の問題であることが多い

⚠️ 理由③ 「我慢は美徳」という思い込みが助けを遠ざける

「これくらいで騒いだら大げさ」「我慢すれば丸く収まる」という思い込みは、相談や行動のタイミングを遅らせてしまう。

しかし、朝になると体調が悪くなる、会社に行くのが怖い——こうした心や体のサインが出ているなら、それはもう「我慢で乗り切る」段階ではない。我慢は美徳ではなく、自分を守る行動こそが必要な段階に来ている

コーキが「それは、お前が悪いんじゃない」と伝える

■ ケイイチロウの一言

ケイイチロウが、いつもより少しだけ穏やかな声で言った。

「我慢して守れるのは、その場だけだ。自分を守るために、誰かに助けを求めていい。」

サクラは、その言葉を聞いて、少しだけ目に涙をためた。

ケイイチロウがいつもより穏やかに告げる

■ 解決策:自分を守るための3ステップ

一人で抱え込まないことが、何より大切だ。今からできることがある。

✅ ステップ① 何があったかを「客観的な記録」として残す

つらい中でも、できる範囲で事実を記録しておくと、後で相談するときの大きな助けになる。

・日付・時間・場所
・誰から、どんな言動があったか(できるだけ具体的に、言われた言葉そのまま)
・その場に他に誰がいたか
・メール・チャット・録音など、形に残るものがあれば保存する(ただし、録音や資料の扱いは、拡散せず、相談窓口や専門家に見せる範囲にとどめる。会社資料・顧客情報・個人情報を無断で持ち出さないよう注意する)

感情ではなく「事実」を淡々と記録するのがポイントだ。スマホのメモでも手帳でもいい。

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✅ ステップ② 一人で抱えず、相談先を頼る

ハラスメントは、一人で解決しようとしなくていい。むしろ、一人で抱え込まないことが重要だ。

相談先には、社内と社外がある。

社内:信頼できる上司、人事部、ハラスメント相談窓口(パワハラ防止措置は、現在すべての企業に義務付けられており、相談体制の整備などが求められている)
社外:下記の公的な相談窓口

社内に相談しにくい場合や、社内で解決しない場合は、迷わず社外の窓口を使ってよい。

✅ ステップ③ 心と体のケアを最優先にする

体調にサインが出ている場合、まず守るべきは自分の心と体だ

・つらい時は、休むことをためらわない(付与されている有給休暇を使うことは、労働者の権利だ)
・心身の不調が続く場合は、早めに医療機関や専門の窓口に相談する
・眠れない、食べられない、涙が止まらない、出勤前に強い体調不良が出るなどの場合は、早めに医療機関や専門相談窓口につながることが大切だ
・「距離を取る」ことは負けではない。異動願いや、最終的には転職も、自分を守る正当な選択肢だ

つらいとき・困ったときの相談窓口:
厚生労働省 総合労働相談コーナー(パワハラ・労働トラブル全般・無料)
あかるい職場応援団(厚生労働省)(ハラスメントの定義・相談先の情報)
こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(心の不調・電話やSNS相談窓口の案内)


ルリが静かにサクラを見守る

🐱 ルリのまとめ

「「私が我慢すれば」の「私」が、一番大事にされていない」

  • 特定の人だけに繰り返される人格否定・無視・過大な要求は、「指導」の範囲を超えている可能性がある——あなたが至らないからではない
  • 一人で抱え込まなくていい——記録を残し、社内の相談窓口や社外の公的窓口を頼る
  • 心や体にサインが出ているなら、休むこと・距離を取ることは正当な自衛——我慢より自分を守ることを優先する

■ コーキの締め

しばらくして、サクラがぽつりと言った。

「私、ずっと『大丈夫です』って言ってきたんですけど」

「ああ」

「本当は、ずっと大丈夫じゃなかったのかもしれません」

コーキは静かに頷いた。

「『大丈夫じゃない』って言えたのは、進歩だ」

サクラは少しだけ、息を吐いた。さっきより、肩の力が抜けていた。

「相談窓口、調べてみます。一人で抱えないって、決めました」

帰っていくサクラの背中は、まだ少し疲れていた。けれど、来たときよりは、ほんの少しだけ前を向いていた。

(「我慢」を覚えていた人間が、「自分を守る」ことを選ぼうとしている)

ほんの少し前を向いて帰るサクラ

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※もしあなたが今、つらい状況にあるなら、どうか一人で抱え込まないでください。上記の相談窓口は、あなたの味方です。

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