物語パートに登場する人物・団体・学校名・地名・事務所名等は、特記のない限り創作上のものです。実在の人物・団体・地域とは関係ありません。
その日の夕方、俺は所長のケイイチロウと二人で静かに仕事をしていた。
珍しく穏やかな時間だった。依頼もなく、電話もなく、事務所にはコーヒーの香りだけが漂っていた。

その静寂を破ったのは、いつものドアの音だった。
「コーキさん! ちょっといいですか。奨学金のことで……」
ケンタだ。今日はどこか気まずそうな顔をしている。
「どうした」
「奨学金って……返さなくていいんじゃないんすか?」
俺はペンを置いた。
■ ケンタの「事件」
話を聞いてみると、ケンタは大学1年のときに奨学金を申請していた。毎月5万円、4年間で総額240万円。
「申請したとき、親が『もらえるお金だから大丈夫』って言ってて……俺もそのままにしてたんですよね」
「給付型か、貸与型か確認したか?」
「……え? 種類があるんすか」
俺は奨学金の書類を出してもらった。日本学生支援機構の第二種奨学金。利率は最大年3%。卒業後おおむね半年ほどで返還が始まる(在学猶予終了の翌月から7か月目が目安)。
「ケンタ、これは借金だ」
「……え」
「240万円を、利子をつけて返す必要がある」
ケンタの顔から、みるみる血の気が引いた。

■ コーキの分析:なぜ「奨学金=もらえるお金」と思われるのか
ケンタが知らなかったのは、珍しいことじゃない。奨学金の実態を正しく理解していない学生は、実は多い。なぜそうなるのか、理由が3つある。
ケンタのケースは、誰にでも起きうる典型的な「知らなかった」事件だった。
■ ケイイチロウの一言
所長室からケイイチロウが出てきた。コーヒーカップを手に、静かに口を開いた。
🔍 ケイイチロウの一言
知らずに借りた金も、知って借りた金も、返す義務は同じだ。だが知っているかどうかで、対策が打てるかどうかが変わる
ケンタはうつむいたまま、小さく頷いた。

■ 解決策:返済と向き合う3つのステップ
奨学金の返済は、正しく知れば対策が打てる。パニックになる前に、順番に整理しよう。
「フリーランスは収入が月によってバラつく。返済が苦しい月に滞納すると、信用情報に傷がつく。クレジットカードが作れなくなったり、将来ローンが組めなくなったりする可能性もある。滞納だけは絶対に避けろ」
「……滞納したらそんなことになるんすか」
「なる。だから猶予制度がある。使うことは恥じゃない。制度を知って使いこなすのが、賢い借り手だ」
ケンタは手元のスマホでスカラネット・パーソナルのページを開きながら、ゆっくりと現実の数字を見つめ始めた。返済に行き詰まりそうになったら、まず日本学生支援機構(JASSO)の窓口に相談してほしい。制度を知って使うことが、賢い借り手の第一歩だ。
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■ 今すぐできる:自分の奨学金を確認する
■ ルリのまとめ
棚の上のルリが、静かにこちらを見下ろしていた。今日はいつもより少し真剣な目をしている気がした。

🐱 今日のまとめ
■ コーキの締め
「ケンタ、知らなかったことを責めても仕方ない。大事なのは、今から知って動くことだ」
「……でも、240万って額がでかすぎて、なんか現実感ないっすよ」
「月に直せばわかる。月々いくら返すか、何年続くか。その数字を見てから、フリーランスとしての収入目標を考えろ。返済額を生活費や税金・国保・年金と一緒に織り込んだ収入目標を考えることが大事だ」
「……なんか急に、ちゃんとしなきゃって気になってきました」
「それでいい。その気持ちが出発点だ」
ケンタが帰り際、スマホを見ながら呟いた。
「……月々2万円くらいの返済か。フリーランスで月20万稼げれば、なんとかなりそうっすね」
「まず20万稼ぐ方法を考えろ。それが次の話だ」
ケンタが帰った後、スマホに通知が届いた。ミサキからのインスタのメンションだ。
投稿には「奨学金って給付型だと思ってた人〜🙋」というテキストと、ミサキ本人がカメラ目線で手を挙げている動画が添付されていた。コメント欄には「わかる」「私も知らなかった」という声が続々と並んでいる。
——お前のフォロワーも、みんな知らなかったのか。
俺はいいねだけ押して、スマホを閉じた。

次回:ケンタ、「フリーランスになるには、何から始めればいいんすか」と聞いてくる。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法務・金融・投資助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新情報と異なる場合があります。困ったときは公的窓口(消費生活センター・法テラス・日本学生支援機構等)にご相談ください。

