奨学金の引き落としが不安になったら|延滞する前に使える減額返還・猶予と申請の実際

奨学金返還の相談ガイド — 延滞する前に使える減額返還・返還猶予の制度と申請手順を説明するアイキャッチ 家計・借金
奨学金の減額返還・猶予

※奨学金の制度・要件は年度や貸与の種類で変わります。最新の内容と手続きは、日本学生支援機構(JASSO)の公式ページでご確認ください(確認日:2026年10月15日)。

FILE 04|ミルト探偵事務所・調査ファイル

この記事は、コーキが所長ケイイチロウに教わりながらまとめた調査ファイルです。制度の内容は公的機関の情報に基づいてまとめ、記事の途中に入る会話は読み飛ばしても内容は変わりません。

奨学金が返せないと感じたら、延滞する前に日本学生支援機構(JASSO)へ連絡して、減額返還か返還期限猶予を願い出るのが最優先です。どちらも自動では適用されず、願い出が必要だからです。

📝 この記事でわかること

  • 減額返還と返還期限猶予の違いと、向いている人
  • 対象の目安(収入基準)・必要書類・申請の流れ
  • 延滞するとどうなるか、延滞前にやること

この記事では、JASSOの貸与型奨学金について、2つの制度の違い、対象の目安、申請の流れ、延滞するとどうなるかを整理します。借りる前の判断や返済額の計算は、第4話「奨学金の返済はいくら?|月々の返済額の目安と苦しいときの制度」にまとめています。

  1. 結論:返せなくなる前に、機構に連絡して制度を選ぶ
  2. 延滞すると延滞金や信用情報への登録が関わるため、延滞前に申請する
    1. 延滞金は原則年3%(採用時期や奨学金の種類によって異なる)。延滞3か月以上で信用情報機関への登録対象になる
    2. 延滞してしまっても、猶予が使える場合がある
  3. 制度の全体像(比較表)
    1. 月額15,000円なら、減額で3,750〜10,000円になる(例)
    2. 第一種・第二種の違いは、減額返還では利息の扱いと所得連動返還型の人に出る
  4. 減額返還の申請方法
    1. 対象:減額すれば返せる人
    2. 収入の目安は、給与所得者なら年収400万円以下、給与以外を含むなら所得300万円以下
    3. 申請の流れ:対象確認→書類を揃える→願い出→審査
    4. 必要書類は所得証明書等が中心で、事由によって変わる
    5. 延滞中は願い出できない。延滞を解消してから申請する
  5. 返還期限猶予の申請方法
    1. 対象:災害・傷病・経済困難・失業などで返せない人
    2. 経済困難の収入基準は、給与所得者なら年収300万円以下
    3. 申請時期は猶予開始希望月の3か月前から前々月末まで、以降は1年ごと
    4. 必要書類は猶予願と所得証明書等。申請はスカラネット・パーソナルか郵送
    5. 審査中も、口座振替の請求や督促の通知は原則として止まらない
  6. 申請前の準備チェックリスト
  7. 申請が通らない・迷うときの相談先
  8. よくある質問
  9. まとめ

結論:返せなくなる前に、機構に連絡して制度を選ぶ

  • 月々の返済を軽くしたいなら 減額返還(返還月額を減らし、そのぶん返還期間を延ばす)。
  • 返済そのものを待ってもらいたいなら 返還期限猶予(一定期間、返還を待ってもらう)。ただし元金や利子が免除されるわけではありません。
  • どちらも願い出が必要です。まず公式ページで自分が対象か確認し、迷ったらJASSOの奨学金相談センターへ電話します。
机に広げた紙の分かれ道の図を指差すコーキと、机の右で同じ図を見ているルリ。道は左が低い階段の続く道、右が途中に平らな踊り場のある道

延滞すると延滞金や信用情報への登録が関わるため、延滞前に申請する

延滞金は原則年3%(採用時期や奨学金の種類によって異なる)。延滞3か月以上で信用情報機関への登録対象になる

  • 延滞金:第二種と、2005年4月以降に採用された第一種では、延滞している割賦金(第二種は利息を除く)に、原則年3%の延滞金がかかります。2005年3月以前に採用された第一種などは、計算のしかたも割合も違うため、自分の条件をJASSOで確認してください。
  • 信用情報:延滞が3か月以上になると、個人信用情報機関への登録対象になります。新たに返還を始めた人は、返還開始から6か月が経った時点で延滞3か月以上なら対象です。
  • 登録前に、SMSや文書での通知があります。
  • 登録されると、スマホの分割払いやクレジットカードの利用、住宅ローンなどに影響することがあります。情報は返還完了から5年後に削除されます。

延滞してしまっても、猶予が使える場合がある

延滞中でも、傷病・生活保護受給中など、真に返還が困難な事由があれば、その期間について返還期限猶予が適用されます。適用された期間は、新たに延滞金が加算されません。減額返還は延滞を解消しないと申請できないため、延滞前に動くことが大切です。

延滞が始まった月から、事由に合う証明書を出せる場合は「一般猶予」を申請できます。証明書を出せない場合は、延滞している期間を据え置く「延滞据置猶予」を申請します。延滞据置猶予の経済困難の目安は、給与所得者なら年収200万円以下、給与以外の所得がある人なら年間所得130万円以下で、通常の一般猶予の目安(300万円・200万円)より厳しくなっています。どちらの場合も、認められた月より前の延滞期間には、さかのぼって猶予を使えません。延滞してしまったら、早めにJASSOの奨学金相談センターに相談してください(JASSO|延滞している場合の返還期限猶予の申請手続き/JASSO|延滞据置猶予で申請)。

制度の全体像(比較表)

制度内容期間の目安向いている人
減額返還返還月額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1のいずれかに減らす1回の願い出で12か月まで。再申請で延長でき、通算15年(180か月)が上限収入はあるが、今の返還額だと苦しい
返還期限猶予(一般猶予)返還を待ってもらう1年ごとに願い出。通算10年(120か月)が上限(災害・傷病・生活保護受給中・育児休業中などは別扱い)失業・傷病・低収入などで、今は返せない
返還免除死亡、または精神・身体の障害による免除―該当する事情がある

月額15,000円なら、減額で3,750〜10,000円になる(例)

返還月額が15,000円の場合:

減額の割合減額後の月額
3分の210,000円
2分の17,500円
3分の15,000円
4分の13,750円

減額返還は、毎月の返還額を減らして、その分だけ返還期間を延ばす仕組みです。返す総額そのものが減るわけではありません。第二種奨学金(利息付き)でも、減額返還では利子の総支払額は変わらないとJASSOは説明しています。

第一種・第二種の違いは、減額返還では利息の扱いと所得連動返還型の人に出る

  • 第一種は無利子、第二種は利息付きです。減額返還を使っても第二種の利子の総支払額は変わりません。
  • 2017年度(平成29年度)以降に採用された第一種で所得連動返還型を選んでいる人は、減額返還を申請できません。
  • 返還期限猶予も同じで、JASSOは「利子を含む返還予定総額は変わりません」と説明しています。ただし猶予は返還期限を先送りする制度で、元金や利子が免除されるわけではありません。先送りした分、返還完了までの期間が延びます。

🔎 所長に教わったときのメモ

コーキ:「二つ並んでいると、自分がどっち向きなのか、決められない気がします」

ケイイチロウ:「減らせば続けられるのか、今はいったん止めたいのか。制度から選ぶのではなく、自分の状態から選ぶ」

コーキ:「待ってもらっても、残りが消えるわけではない、と書いてありました」

ケイイチロウ:「そこを読み落とさなかったのはいい。軽くなる額より、そのあとどれだけ続くかを見るほうが、判断を誤らない」

コーキ:「どっちが楽か、じゃなくて……どっちなら続けられるか、か」

机に広げた分かれ道の図を指しながら問いかけるコーキと、図ではなくコーキのほうを見て答える所長ケイイチロウ

減額返還の申請方法

対象:減額すれば返せる人

災害、傷病、その他の経済的理由で返還が困難だが、当初の返還月額を減らせば返せる人です。あわせて、口座振替(リレー口座)に加入していること、月賦返還であること(年賦などで返している人は月賦への変更が必要)、所得連動返還方式を選んでいないことが条件です(JASSO|減額返還制度の概要)。

収入の目安は、給与所得者なら年収400万円以下、給与以外を含むなら所得300万円以下

  • 給与所得者:年間収入400万円以下(扶養している子が2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下)
  • 給与以外の所得がある人:年間所得300万円以下(子2人なら400万円以下、3人以上なら500万円以下)
  • 審査では、被扶養者1人につき38万円が収入・所得から差し引かれます。

たとえば給与所得者で年収430万円、被扶養者が1人なら、430万円−38万円=392万円で審査されます。基準を超えても、医療費・育児費用などの事情や、減収・失業などで別の申請ができる場合があります。

申請の流れ:対象確認→書類を揃える→願い出→審査

  1. JASSOの公式ページで、自分が対象か確認する。
  2. 申請事由ごとの必要書類を確認する。
  3. 市区町村で所得証明書等(所得・課税証明書、住民税非課税証明書など)を取り寄せる。マイナンバーを提出済みなら、証明書類の一部を省略できます。
  4. スカラネット・パーソナルで願い出る。インターネットで申請できない場合は、願出用紙と必要書類を郵送します。
  5. 審査の結果を待つ。承認されたら、決まった月額で返還する。

適用は、願い出た「開始希望月」の返還分からです。現在返還中の人の場合、JASSOは(1)提出書類に不備がないこと、(2)開始希望月の前月27日の振替が行われたこと、の2点を確認したうえで、開始希望月の中旬ごろに「奨学金減額返還承認通知」を送ります。つまり、承認通知が届くのは適用が始まる月の途中です。審査にかかる日数そのものは公式に明記されていないので、余裕をもって出すのが安全です。なお書類に不備があると一式返送され、返送の時期によっては翌月以降の開始に訂正させられます。

必要書類は所得証明書等が中心で、事由によって変わる

所得証明書等が中心です。申請事由には、経済困難、失業中、新卒等、災害、傷病などがあり、事由ごとに書類が変わります。現在の様式は令和8年度の証明書に対応しています。

延滞中は願い出できない。延滞を解消してから申請する

願い出の時点で延滞があると、減額返還は申請できません。延滞を解消すれば申請できます。また、減額返還の適用中に振替が2回連続でできないと、減額返還が遡って取り消され、延滞金が発生します。

返還期限猶予の申請方法

対象:災害・傷病・経済困難・失業などで返せない人

承認された期間は返還を待ってもらえます。ただし、返還すべき元金や利子が免除されるものではありません。

経済困難の収入基準は、給与所得者なら年収300万円以下

経済困難で願い出る場合は、給与所得者は年間収入(税込)300万円以下、給与以外は年間所得200万円以下が基準です。基準を超えても、減収・休職・失業などで推定年収が下がる場合の申請があります。

申請時期は猶予開始希望月の3か月前から前々月末まで、以降は1年ごと

  • 延滞していない人:猶予開始希望月の3か月前から、前々月末までに提出します。
  • 延滞している人:できるだけ早く提出します。
  • 1年ごとに願い出が必要です。通算10年(120か月)が上限で、災害・傷病・生活保護受給中・育児休業中などは事由が続く間、願い出できます。

必要書類は猶予願と所得証明書等。申請はスカラネット・パーソナルか郵送

経済困難なら、猶予願(チェックシート付き)と、令和8年度の所得証明書・市県民税(所得・課税)証明書・住民税非課税証明書のいずれかの原本が必要です。マイナンバーを提出済みなら、証明書の提出を省略できます。

審査中も、口座振替の請求や督促の通知は原則として止まらない

審査中は、口座振替請求や、連帯保証人等への督促通知を止められないとJASSOは明記しています。承認の通知が届くまでは、請求が続く前提で動いてください。なお、JASSOのよくあるご質問では、猶予願を出したあとの審査中は督促の電話を一時中断すると案内されています。ただし、引き落としの請求や通知まで止まるわけではありません。

🔎 所長に教わったときのメモ

コーキ:「出したのに請求が続くのは、こたえると思います」

ケイイチロウ:「続く前提で構えておけば、驚かずに済む。止まっていないことと、通っていないことは別だ」

コーキ:「出したあとも、口座は見ておく」

ケイイチロウ:「通知が届くまでが、手続きの続きだ」

申請前の準備チェックリスト

  • ☐ 貸与の種類(第一種・第二種)と、月々の返還額、残高を確認した
  • ☐ 直近3か月の収入・支出をメモした
  • ☐ 収入の目安(減額返還は給与所得者で年収400万円以下、猶予は300万円以下など)と、自分の年収を比べた
  • ☐ 必要書類(所得証明書等)の取り寄せ先を調べた
  • ☐ 延滞していないか、引き落とし日に口座残高があるか確認した
  • ☐ 家族・保証人(人的保証の場合)に、相談することを伝えるか決めた

申請が通らない・迷うときの相談先

  • JASSO 奨学金相談センター:0570-666-301(ナビダイヤル)。平日9:00〜20:00(土日祝・12/29〜1/3を除く)。海外・一部の携帯電話・IP電話からは03-6743-6100。11時〜17時が比較的つながりやすいとされています。奨学生番号を手元に用意し、通話料は利用者負担です。窓口での対面相談は行っていません。
  • 気持ちがつらいときは、一人で抱えず、身近な人や、自治体の生活相談・こころの相談窓口などに話す。

よくある質問

Q. 減額すると総額は増える?
返す総額そのものは減りませんが、第二種でも減額返還では利子の総支払額は変わらないとJASSOは説明しています。返還期間が延びる点は変わりません。

Q. 申請の期限は?
返還期限猶予は、猶予開始希望月の3か月前から前々月末までです(延滞中はできるだけ早く)。減額返還は、適用を始めたい月(継続の場合も同じ)の前々月末までに提出します。逆に早すぎてもだめで、開始希望月より4か月以上前に出すと返送されます。つまり実質「3か月前から前々月末まで」の窓です。

Q. 無職でも使える?
経済困難(無職・未就職・低収入)は、返還期限猶予の対象になり得ます。減額返還は、減額すれば返せる人が対象です。

Q. 保証人に連絡が行く?
人的保証の人は行きます。猶予の審査中は、本人を含め連帯保証人への督促通知等を止められず、承認されたときの「奨学金返還期限猶予承認通知」も、本人に加えて連帯保証人に送られます。減額返還の「奨学金減額返還承認通知」も、本人・連帯保証人(人的保証の場合のみ)・振替口座の名義人に送られます。機関保証の人には連帯保証人がいないため、この送付先には含まれません。自分がどちらの保証かわからないときは、スカラネット・パーソナルか奨学金相談センターで確認してください。

まとめ

  • 返せなくなる前に、減額返還か猶予を検討する。
  • 減額は「月額を減らして期間を延ばす」、猶予は「待ってもらう(免除ではない)」。
  • 延滞していると減額返還は申請できない。猶予は事由があれば延滞中も使える。
  • 迷ったら、奨学金相談センターへ。

🐱 ルリのまとめ

「返せなくなってから探すより、まだ払えているうちに聞いておくほうが、選べる道は多いんだよね」

申請書類の横に座るルリと、「返せなくなってから探すより、まだ払えているうちに聞いておくほうが、選べる道は多いんだよね」と記した思考の吹き出し

🔗 一人で抱えず、先に相談するということ

先に相談することが大切なのは、奨学金の返還だけではありません。誰にも言えないまま、一人で動いてしまった人の物語です。

第48話:ミサキが消える →