Amazonのアソシエイトとして、コーキの社会人前夜相談室は適格販売により収入を得ています。
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※物語パートに登場する人物・団体・会社名は創作上のものです。実在の人物・団体とは関係ありません。
■ オープニング
七月の終わり。ヒロがミカヅキゲームズに入社して、三週間が経っていた。
コーキがデスクで書類を整理していると、階段を急ぎ足で上がってくる音がした。
「コーキさん、いますか」
ドアを開けたのはヒロだった。黒縁メガネ、スーツ姿。いつもの几帳面な印象はあるが、今日は少し顔色が悪い。
「入れ」
「……失礼します」
ヒロは椅子に座るなり、スマホを取り出してテーブルに置いた。
「やらかしました」

■ 問題提示
「入社して三週間で、同僚に過去のXのアカウントを特定されました」
コーキはスマホの画面を見た。アカウント名は本名ではないが、プロフィール欄に大学名と学部、そして趣味として「映像制作・ゲーム」と書いてある。
「就活中の投稿です。鍵垢にしてたんですけど、なんで見られたのか」
「何が書いてあった」
「……就活への愚痴と、業界批判です。『スマホゲーム業界は搾取構造』とか、あとは内定もらった会社のことを遠回しに書いたやつとか」
「今の会社の人間に見られたのか」
「Slackで同僚に送られてきました。『ヒロさん、これですよね?』って。その後、ソウタさんに呼ばれて。今は『一応確認させてほしい』という話になっていて」
ヒロはメガネのフレームをそっと押さえた。
「最悪の場合、試用期間中に解雇になりますか」

■ コーキの分析:SNSで「やらかす」3つのパターン
「まず落ち着け。状況を整理する」
コーキはメモ帳を開いた。
⚠️ 理由① 「鍵垢」は完全な非公開ではない
多くの人が誤解しているが、鍵垢(非公開設定)にしても「絶対に見られない」わけではない。
主なリスクは次の通りだ。過去に公開設定だった時期の投稿は、その後に非公開にしても検索キャッシュや引用・スクリーンショットとして残っていることがある。フォロワーが保存・拡散すれば、鍵をかけた後でも広まる。また、連携アプリや外部サービスを通じて情報が外部に出るケースもある。
「鍵をかけたから大丈夫」は、過信だ。
⚠️ 理由② 複数の情報が「組み合わさる」と特定される
ヒロのアカウントには大学名・学部・趣味が書かれていた。別のSNSには顔写真がある。Xの投稿の時期と就活の時期が一致する。これだけの情報が揃えば、本名を使っていなくても個人の特定は難しくない。
実名・大学名・顔写真・勤務先・居住エリア——このうち2〜3つが同一人物のものとして紐付くと、特定されるリスクが急激に上がる。
⚠️ 理由③ 過去の投稿は「削除しても残る」ことがある
投稿を削除しても、それが完全に消えるとは限らない。
過去に公開していた時期の投稿、誰かによる引用やスクリーンショット、フォロワー経由の拡散——これらは削除後も残り続ける可能性がある。誰かが保存していれば、それはもう手が届かない。
「あのときの自分」がネット上に残り続ける——これがいわゆる「デジタルタトゥー」だ。

■ ケイイチロウの一言
ちょうどその場にいたケイイチロウが、コーヒーカップを置いてから静かに言った。
「インターネットに書いた言葉は、消えるのではなく、眠るだけだ。」
ヒロはその言葉を、手帳に書き留めた。

■ 解決策:SNSリスクを減らす3ステップ
今からでもできることはある。「完璧に消す」は難しいが、「リスクを下げる」は今日からできる。
なお、試用期間中であっても、会社がいつでも自由に解雇できるわけではない。解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされる。ただし、投稿内容が業務上の信用や守秘義務に関わる場合は、会社から説明を求められることがある。不安な場合は労働相談窓口に確認するのが早い。
✅ ステップ① 今すぐ自分のSNSを「採用担当・同僚の視点」で見直す
自分のSNSアカウントを、自分のことを何も知らない第三者が見たらどう思うか——という視点で見直す。
確認すべきポイント:
・勤務先・取引先が特定される形での批判や、誹謗中傷に見える投稿はないか
・職場や顧客の情報が写り込んだ写真はないか
・個人を特定できる情報の組み合わせになっていないか(大学名+顔写真+勤務先など)
・過去に公開設定だった時期の投稿が、引用やスクショで残っていないか
見直したうえで問題のある投稿は削除・非公開化し、アカウント設定も改めて確認する。
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✅ ステップ② 個人特定につながる情報を「分散」させる
すべてのSNSに同じ情報を載せない。
・実名アカウントと趣味・発信アカウントを分ける
・プロフィールに大学名・勤務先・居住地を組み合わせて載せない
・顔写真はいずれかのアカウントにしか載せない
完全に分けることが難しくても、「組み合わせで特定できる情報量」を意識して減らすだけでリスクは下がる。
✅ ステップ③ 公開範囲にかかわらず、業務・顧客・職場の内部事情がわかる投稿は避ける
新社会人が特に気をつけるべきルールがある。
・職場の内部情報・会議内容・プロジェクト名を投稿しない
・顧客や取引先の名前・情報を書かない
・軽い愚痴のつもりでも、顧客情報・社内情報・未公開プロジェクト・取引先が推測できる内容が含まれると、守秘義務や就業規則上の問題になることがある
・勤務先・取引先・関係者が特定される形での批判や、誹謗中傷に見える投稿は避ける
就業規則にSNSに関する規定があれば必ず確認しておく。
困ったときの相談先:
・厚生労働省 総合労働相談コーナー(試用期間・解雇の不安・職場トラブル全般)
・確かめよう労働条件(試用期間のルールを確認したい場合)
・国民生活センター(ネットトラブル全般)
・セーファーインターネット協会 誹謗中傷ホットライン(自分への誹謗中傷・なりすまし投稿の削除相談)

🐱 ルリのまとめ
「消したつもりが、一番消えないのは後悔だ」
- 鍵垢でも「完全に見られない」とは限らない——スクショ・引用・過去の公開設定などを通じて広まることがある
- 実名・顔写真・大学名・勤務先のうち2〜3つが揃うと、本名を使っていなくても特定されやすい
- 業務・顧客・取引先が推測できる内容が含まれると守秘義務や就業規則の問題になることがある——就業規則のSNS規定を今すぐ確認する
■ コーキの締め
「で、ソウタさんにはなんて言えばいい」
コーキは少し考えてから答えた。
「まず、どの投稿が問題視されているか確認しろ。事実と違う受け取られ方があるなら、それは説明する。必要に応じて削除・非公開化し、今後は業務・顧客・職場の内部事情がわかる投稿はしないと、自分から具体的に伝えろ」
「……謝るだけじゃなくて、今後の対応まで言うんですね」
「謝罪だけでは再発防止にならない。行動の見通しを一緒に伝えた方が、信頼を取り戻す速度が速い」
ヒロはしばらく黙ってから、メガネを直した。
「わかりました。やってみます」
立ち上がったヒロは、いつもより少しだけ背筋が伸びていた。
(完璧主義のヒロが、「謝る」という不完全な行動を選んだ。それもまた、成長の一歩だ)

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