Amazonのアソシエイトとして、コーキの社会人前夜相談室は適格販売により収入を得ています。
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※物語パートに登場する人物・団体・会社名は創作上のものです。実在の人物・団体とは関係ありません。
■ オープニング
八月の終わり。蝉の声が少し落ち着いてきた午後、ケンタがコンビニ袋を提げてやってきた。
「コーキさん、ちょっと聞いてもらっていいですか」
いつものアイスコーヒーをデスクに置きながら、ケンタは一枚の紙をテーブルに広げた。市役所から届いた封筒だった。
「国民健康保険の、納付書なんですけど」
「それがどうした」
「……金額見て、ソファから転げ落ちました」

■ 問題提示
納付書の年額の欄を見て、コーキは少し眉を上げた。
「去年の倍以上だな」
「そうなんです。去年は月1万円ちょっとだったのに、今年いきなり倍くらいになってて。何かの間違いかと思って市役所に電話したんですけど」
「間違いじゃなかったのか」
「『前年の所得が増えたので』って言われました。確かに去年、仕事が増えて、それなりに稼げたんですけど……」
ケンタはコーヒーをすすった。
「稼げたのは嬉しかったんですよ。でも、その分の請求が、一年遅れでこんなに来るとは思わなくて」
「払えるのか」
「それが……増えた分は、もう使っちゃってて」
ケンタは少し気まずそうに頭をかいた。
「まあいっか、と思って、貯金してなかったんです」

■ コーキの分析:国保の請求が「後から効いてくる」3つの理由
「ケンタらしい話だが、これは多くのフリーランスがつまずきやすいところだ」
コーキはメモ帳を開いた。
⚠️ 理由① 国民健康保険料は「前年の所得」で計算される
国民健康保険料は、一般的に前年(1月〜12月)の所得をもとに、その年度の金額が決まる。
つまり、収入が増えた年の保険料がすぐ上がるのではなく、その翌年に上がる。仕事が増えて稼げた年の影響が、一年遅れでやってくる構造だ。
収入が右肩上がりのときほど、「去年より稼いだのに、保険料は前年ベースで安かった」という錯覚に陥りやすい。そして翌年、跳ね上がった請求に驚くことになる。
※保険料の計算方法・料率は市区町村によって異なり、所得割・均等割・平等割などの組み合わせも自治体ごとに違う。賦課限度額も年度によって変わるため、正確な金額は自分の住む自治体に確認するのが確実だ。なお、自治体によっては「国民健康保険税」と呼ばれることもある。
⚠️ 理由② 会社員と違い、保険料を「全額自分で」負担する
会社員の健康保険は、保険料を会社と従業員で分け合う(労使折半)仕組みになっている。給与明細から天引きされる健康保険料は、実は半分会社が負担している。
一方、フリーランス・個人事業主が加入する国民健康保険には、会社員の健康保険のような事業主負担がない。世帯の加入者の所得などをもとに計算された保険料を、自分で負担することになる。
会社員時代と同じ感覚でいると、「こんなに高いのか」と感じやすいのはこのためだ。
⚠️ 理由③ 「住民税」も同じ仕組みで後から来る
国保とよく似た構造を持つのが住民税だ。
住民税も前年の所得をもとに計算され、翌年に請求される。つまり、稼げた年の翌年には、国民健康保険料と住民税が「同時に」上がる可能性がある。
この2つが重なると、想定以上の負担になる。フリーランスが2年目以降に「お金が消えていく」と感じる大きな要因の一つだ。

■ ケイイチロウの一言
奥から出てきたケイイチロウが、納付書をちらりと見てから言った。
「フリーランスの収入は、全部が自分の金ではない。税と保険の分は、最初から預かっているだけだ。」
ケンタはその言葉を聞いて、しばらく固まっていた。

■ 解決策:後から来る請求に備える3ステップ
過ぎたことは仕方ない。だが、来年以降に同じことを繰り返さないためにできることがある。
✅ ステップ① 収入の一部を「税・保険用」として先に分けておく
フリーランスは、入ってきたお金の全額を「使えるお金」と考えると危険だ。
入金のたびに、その一部を税金・国保・住民税のための口座に分けておく。目安となる割合は所得や自治体によって異なるが、「将来の請求のために一定額を取り分ける」習慣そのものが重要になる。
別口座やネット銀行の目的別口座を使うと、「使ってしまった」を防ぎやすい。会計ソフトを使えば、所得の見込みから納税額の目安を把握しやすくなる。
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✅ ステップ② 払うのが難しいときは「放置」せず、必ず相談する
万が一、請求額を一度に払うのが難しいときでも、放置するのが一番まずい。延滞金が発生したり、財産差し押さえにつながる可能性もある。
多くの自治体には、以下のような制度や相談窓口がある。
・分割納付:一度に払えない場合、分割で納める相談ができることがある
・減免制度:失業・収入減少など一定の条件を満たすと、保険料が軽減される場合がある
いずれも自治体によって条件が異なる。納期限前、遅くとも督促が来る前に相談する方が、選択肢が広がりやすい。まずは納付書に記載の市区町村の窓口に早めに相談することが大切だ。
✅ ステップ③ 収入が増えてきたら、制度の選択肢も知っておく
フリーランスとして収入が安定・増加してきた場合、保険や税の負担を抑える選択肢を「知っておく」ことには意味がある。
・国民健康保険組合(業種によっては加入できる場合がある)
・法人化(収入が安定してきたら検討対象になることがある)
ただし、これらはメリット・デメリットや適用条件が複雑で、安易に判断すると逆効果になることもある。すぐに判断する話ではないが、収入が安定してきたら、税理士などの専門家や公的な相談窓口に相談したうえで判断するのが安全だ。
確認・相談に役立つ窓口:
・お住まいの市区町村の国民健康保険窓口(保険料の計算・減免・分割)
・厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について(国保の仕組みの公式解説)
・国税庁 タックスアンサー(税金の基本的な仕組み)
・日本税理士会連合会(税理士への相談窓口の案内)

🐱 ルリのまとめ
「去年の収入の影響が、今年のおまえに届いただけだ」
- 国民健康保険料・住民税は、主に前年の所得をもとに計算され、翌年に請求される——稼げた年の翌年に負担が増える
- 会社員と違い、フリーランスの国保には会社員の健康保険のような事業主負担がない——「高い」と感じるのはこのため
- 払えないときは放置せず、自治体の分割・減免の相談を——延滞は状況を悪くするだけ
■ コーキの締め
ケンタが納付書を封筒に戻しながら、ぽつりと言った。
「俺、ずっと『まあいっか』で生きてきたんですけど」
「知ってる」
「さすがに今回は、『まあいっか』じゃ済まなかったです」
コーキは少し笑った。
「気づいたなら、来年は変えられる」
「……はい。来月から、別口座作ります」
ケンタはコンビニ袋を持って立ち上がった。その背中は、第1話で10万円を溶かしていた頃より、少しだけ大人びて見えた。
(「まあいっか」のケンタが、初めて「先に備える」という言葉を口にした)

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